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2社以上の証券会社が目標株価を引き上げた銘柄は

3月期決算企業の本決算発表が続々と行われていますが、決算を受けて目標株価を引き上げる動きも少なからずみられます。

こうしたなか8日の投資のヒントでは決算発表の最初の週となった4月20日から24日に決算を発表した銘柄を対象に複数の証券会社から目標株価の引き上げがあったものを取り上げましたが、今回は第二週目の前半(4月27日と28日)に2社以上の証券会社から目標株価の引き上げがあったもの(足元の株価を上回るもののみ対象)をピックアップしてみました。

そのなかで特に目標株価の引き上げが多かったのがファナック(6954)ときんでん(1944)で5社が目標株価を引き上げており、2015年3月期からの5年間の平均で配当と自社株買いを合わせて利益の最大80%を株主に回すという積極的な株主還元を発表したファナックの投資判断は5社とも強気となっています。

そのほか4社から目標株価の引き上げがあったのが大東建託(1878)と積水化学工業(4204)で、3社がホンダ(7267)とJR東日本(9020)となっています。


もう一つの投資のヒント

先月下旬からスタートした決算発表も終わりが近づいてきました。それでも明日も三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)やみずほフィナンシャルグループ(8411)といったメガバンクやNTT(9432)などが決算を発表する予定です。

■トヨタ(7203) 前期ほど大きくない業績の上振れ期待

トヨタは8日に2016年3月期の営業利益予想を前期比1.8%増(495億円増)の2兆8000億円と発表しました。これは3兆2000億円程度と見込んでいたマーケットの期待を4000億円ほど下回りますが、前期も期初時点は微増(前期比79億円増の2兆3000億円)の見込みで、それが結果的に4500億円以上上回って着地したことから、今期も期初のほぼ横ばい予想が結果的に大きく上振れるという前期同様のストーリーに期待したいところです。

しかし、営業利益の増減要因をみてみると今期も上振れ余地はあるものの、それは前期ほど大きくないようにみえます。前期は期初時点で為替の想定レートをドルで100円、ユーロで140円とし、マイナスとみていた為替変動の影響(▲950億円)が結果的には、ドルが110円、ユーロが139円となったことでプラス(+2800億円)に働いたほか、原価改善の努力のプラス寄与が拡大し、営業面の下振れを補って余りある格好での着地となりました。

今期も為替の想定レートをドルで115円、ユーロで125円と足元のレートより円高に置いていることから、現時点でマイナス(▲450億円)に働くとみている為替の影響が前期のようにプラス寄与に変わる可能性もあります。例えば、ドル円が120円となればそれだけで2000億円の上振れです。また、仮にユーロ円が130円となれこちらでもマイナス(▲550億円)が200億円減る計算になります。

一方で前期と違って今期は期初から原価改善の努力のプラス寄与を2650億円と大きく見積もっていることから、ここでの増益の上積みがあまり期待できそうにありません。年間3000億円の原価改善能力を持つトヨタですが、これまで期初段階では確実にみえているものだけを業績予想に織り込むスタンスをとってきました。したがって前期も期初に1650億円だった原価改善の努力のプラス寄与は最終的に2800億円にまで膨らんでいます。

それが今期は期初から2650億円と大きくなったのは、初めから見積もりやすい新製品投入にともなう効果が多いためです。したがって期初比で1000億円以上も積み上がった前期のような期待はしにくく、為替の影響の上振れで3兆円強という営業利益の水準はみえてきますが、そこから上がなかなか見通せないというのが現時点でのトヨタの業績予想の見方になります。3兆円からの上積みをこれから探っていくことになりそうです。

金山敏之(かなやま・としゆき)
マネックス証券 シニア・マーケットアナリスト

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