(この記事は2015年5月15日に掲載されたものです。提供: Leeways Online


不動産業界の情報開示の問題点

株式投資の分野では証券会社のシステムを使って様々なデータを簡単に分析することができる。一方で、インターネットの普及によって情報の流動性が高まった今日でもなお、不動産投資家が投資不動産の情報を分析することはなかなか難しい。

そもそも、不動産業界において投資の判断に必要なデータが整備されていないことが最大の問題である。不動産業界には、業者が取り扱い物件を登録するための共通データベース『レインズ( REINS )』がある。しかし、データの取得の方法や数には制限があり、分析することを阻害するようなシステムとなっている。

また、各種データを持つ不動産検索サイトも、自分たちが蓄積してきたデータを開示することができないというジレンマを抱えている。不動産検索サイトにとってのお客様は広告掲載料を払っている不動産業者だ。物件を掲載している不動産業者からすれば、不動産相場情報などのデータが開示されてしまうことで取引に不利な情報が出ることにもなりかねない。

アメリカの大手不動産検索サイトを見てみると、日本の大手不動産検索サイトの情報の少なさがよくわかる。日本の不動産検索サイトでは、物件写真と間取り図、構造や階高といった基本的な項目に加え、地図などが掲載されているのがせいぜいだ。「あとはプロである不動産業者に聞いてください」というスタイルになっている。一方でアメリカの不動産検索サイトでは、その物件の市場評価額や過去の実際の取引価格、賃貸に出した場合の相場価格、周辺の取引事例、周辺の学校の偏差値レベルや地域の治安・犯罪発生状況まで、事細かに確認できるようになっている。このように、高額な不動産取引は、本来であれば必要な情報に基づいて進めるべきであるにも関わらず、日本ではそれが実現できていない状況なのだ。

とくに不動産投資では、購入後の収支状況に大きな影響を及ぼすため、周辺の賃料相場などは必須情報であるといえる。現時点で、不動産投資家にとってどのようなサイトを参照すれば役に立つ情報を得ることができるのか、各種不動産関連サイトを徹底分析する。


不動産投資における必要な情報とは?

不動産投資を成功させるために必要な情報といえば、何といっても家賃相場だ。相場から大きくかい離した賃料設定をする悪徳新築マンション業者も存在しているため、騙されないためにも、自身で家賃相場を把握しておくことが重要だ。通常、不動産業者は、検索サイト大手のアットホームが事業者向けに提供している不動産業務総合支援サイト『 ATBB (アットビービー)』などの有料会員サービスを使用して賃料の査定を行っているが、月会費をとる形なので、毎月物件を探しているという方以外にはお勧めできない。

無料で情報を公開しているサイトとしては、大手住宅情報サイト『ホームズ( HOME’S )』の『家賃相場』が挙げられる。

ホームズ 家賃相場

路線・駅別、または市町村別に相場を調べることができる。たとえば、駅別であれば、徒歩 10 分以内の物件の平均的な賃料を部屋の間取り別に確認することができる。月間ユニークユーザーが 240 万人を超えるホームズほどのサイトであれば、より詳細に家賃相場を算出することができるはずだが、クライアントである不動産業者の手前、ざっくりとした平均値しか出せないようだ。

同サイトには『見える!賃貸経営』というページもあり、都道府県の市区町村ごとの空室率や利回りなどが大まかに確認できるようになっている。あくまでも大まかな傾向をつかむという意味においては、参照しておいて損はないといえるだろう。

他に、条件を設定して詳細に家賃を確認できるサイトとしては、適正家賃ドットコムというサイトがある。

適正家賃ドットコム(適正家賃 .com )

築年数、徒歩分数、広さなどを入力することで一都三県の駅ごとの相場家賃がわかる『ズバッと家賃』という無料の査定ツールを提供している。分析データの母数が公開されていないので信頼性がどの程度あるかは確認できないが、簡易的に賃料の相場を知ることができるという部分では有用なサイトといえる。ただし、現時点では 2014 年 6 月より更新が停まっているようなので、最新の状況は反映されていない可能性がある。


不動産投資評価ができるサイト

相場家賃に基づき投資の妥当性の分析をすることで、不動産投資の成功の確率を高めることができる。不動産投資の現場ではいまだに多くの会社で表面利回りのみが判断指標として使われているが、表面利回りは「今この瞬間の物件の価値」を表しているに過ぎない。不動産は長期間運営し、その後の売却があって初めて投資評価ができる資産であるから、表面利回りのみで投資判断することは避けたい。

不動産投資評価の有名な手法として DCF 法(ディスカウントキャッシュフロー法)がある。

DCF 法とは、その不動産が将来生み出す全ての収入を計上し現在の価値に割戻すことで投資価値を計算する手法だ。不動産投資分析ソフトでは REIFA (リーファ)などがあるが、そのウェブクラウド版が CF-PRO だ。

CF−PRO

前述した家賃相場や各種データなどが揃っていれば、本サイトの DCF ツールを使って投資分析を行うことで、将来予測を踏まえた分析結果を得ることができる。 DCF 法の問題点として、割引率の設定によって大きく結果が変わってしまうということがあるが、本ツールでは自分で割引率を設定するしかない。だが、大まかな比較をする分においては有用なツールといえる。機能制限のある無料版がリリースされているが、おそらくは月会費をとる形のサービスとなると思われる。

また、賃料相場、周辺の事例、およびマクロ経済変数を用いた割引率の予測などが全て盛り込まれた DCF 法を使って不動産投資評価をしているサイトがある。 FAIR MARK REPORT だ。

FAIR MARK REPORT

2014 年 3 月現在 200 万件を超える豊富なデータに基づき、ヘドニックアプローチという統計手法を使って家賃相場を計算している。割引率の予測にはモンテカルロシミュレーション法という手法を用い、恣意性のない客観的な分析ができることが特長だ。前述したサイトよりも詳細な家賃査定を行っていることに加え、投資評価に必要な情報が網羅されたレポートを提供している。月会費制ではなく物件ごとにその都度支払う形であるため、必要なときだけ依頼できるところが魅力だ。

不動産投資は、情報の収集能力や分析力の差によって成功の確率が大きく左右される。こうしたサイトを上手に使って、投資の成功確率を高めていくべきだろう。

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