この7月に開始が予定されているボルカールールの適用をめぐり、コモディティなど様々な投資領域から撤退を余儀なくされていることがヘッジファンドの利益を圧迫していると言われている。

昨年9月、米国における公的年金基金のなかでは最大の規模を誇る、カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が、突如としてそれまで運用を委託していたヘッジファンドを通じた投資額約40億ドル(1ドル=120円、約4,800億円)をすべて引き揚げたことで大きな話題となった。今回は、このカルパースの戦略変更に迫った。

カルパースがヘッジファンドの利用を開始したのは2008年、リーマンショック後にポートフォリオ全体が金融変動に大きな影響を受けにくくするヘッジ手段としてだ。

この動きに合わせて他の年金基金もヘッジファンドを利用するようになり、最近ではポートフォリオ・マネジメントの定石としてヘッジファンドが年金に利用される状態が続いてきた。

このカルパースは2013年から14年度にかけては18.4%の運用益を上げ、過去5年間で12.5%、20年間で見ても8.4%の運用益を誇っている。参考までに、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2001年度から2013年度の13年間で運用益2.51%にとどまる。


ヘッジファンドはずしの大きな原因は運用益の低下?

カルパースのヘッジファンド利用からの撤退は、前任のジョゼフ・ディアCIOの死去に伴う見直しに端を発しているといわれる。

調査会社であるウィルシャー・トラスト・ユニバース・コンパリソン・サービスによれば、ここ3年で全米の公的年金がヘッジファンド経由で確保できた収益が3.6%であるのに対し、PEファンド投資は10.9%、株式への直接投資10.6%、債券5.7%で、ヘッジファンドの運用益が最も低くなっているのだ。

こうした運用成績の悪化もヘッジファンド外しの大きな要因となっている。過去5年間の主要ヘッジファンド全体の平均収益率もS&Pの伸びを常に下回っており、運用資産額だけが増え続ける状況となっている。

今回の カルパースの ポートフォリオ見直しは、収益面からいってもヘッジファンドに大きく依存する必要がなくなっていることを示唆している。


出来ては消えていく独特の存在がヘッジファンド

ヘッジファンドはとにかく新しい組織ができては損失を出した途端に解散していくという実に独特な存在となっている。

一度損失を出すファンドは、2%の運用報酬と20%の成功報酬を取れなくなるため、新たなブランドを立てては再参入するケースも多い。カルパースのヘッジファンド外しは、こうした背景を嫌気した新たなポートフォリオ作りのはじまりと見られる。

今のところ他の公的基金が追随する大きな動きにはなっていないようだが、ポートフォリオの組み換えに影響が出始める可能性も否定はできない。