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(写真= Thinkstock/Getty Images)

最近、日本企業の株主還元の動きが活発化しており、投資家たちの熱い注目を集めているが、その理由について迫ってみたい。

まず、日本企業の株主還元の実施状況はどうなっているのか調べてみた。2013年10月から11月にかけて生命保険協会が上場企業1129社、機関投資家158社を対象に実施した調査によると、株主還元に関して数値目標を持つ企業は48・7%、配当性向の目標数値を持っている企業は41・7%となっている。

半数近い企業が具体的な目標を掲げて株主還元に取り組んでいるわけだ。数値目標を持っていない企業もその理由の多くは「安定配当を方針としているから」であり、決して株主還元を軽視しているわけではない。むしろ業績が悪い年度でもきちんと配当するため、あえて目標数値を設定しない企業も多い。

上場企業*の配当総額は、2010年3月期を底に4年連続で増加しており、2015年3月期には7兆円の大台を突破する見込みだ。また画期的な株主還元策を打ち出す企業も相次いでいる。機械大手のA社は2014年5月、この先2年間の配当性向を50%に設定し、残りの50%で自社株買いを行うという新たな還元方針を発表した。つまり期間限定ではあるものの利益を全額、株主に還元するという大胆な施策である。

また電気機器大手のC社は、当期、配当と自社株買いで利益の9割近くを株主に配分するとの計画を明らかにした。さらに、日本を代表する優良企業であるF社は2014年度から2016年度の3年間に総額2000億円強の株主還元を実施するとしている。

*東1、東2、マザーズ上場企業(金融業に属する会社を除く)

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企業は最終利益の一定割合を内部留保するのが一般的である。この内部留保が次の成長に向けて設備投資や研究開発投資を行う際の原資をとる。

したがって配当性向(あるいは自社株買いを含めた総還元性向)が高いことがそのまま株主価値の最大化に結びつくとは限らないが、直近に有利な投資案件がない場合や、過去に蓄積した内部留保で投資資金を賄える場合、利益の大半あるいは全額を株主配当に回すことも決して無理な話ではない。


日本企業におけるROE重視の経営姿勢が配当拡大の原動力

株主還元の充実化が大きなトレンドになった背景には、先に触れたように企業経営におけるROE重視の高まりがある。ROEは企業の収益性を示す経営指標で、その値は当期純利益を株主資本(払込資本金+内部留保)で割ることによって求められる。言い方を変えると、株主から預かった資金(資本)をどれだけ効率的に使用したかを示す指標がROEだ。

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これまで日本企業は米国企業などに比べてROEが低く、それが投資対象としての魅力を毀損しているといわれてきたが、ここにきてROEを高めるために、積極的な株主配当や自社株買いを行う企業が増加してきた。自社株買い(とその消却)を行えば、その分、株主資本が減少し、当期利益÷株主資本であるROEの値は向上する。ROE重視の趨勢と株主還元の充実化は表裏一体をなすものといっていいだろう。

2014年12月現在、日本では5年もの定期預金の金利が軒並み0.4%以下という超低金利が続いている。日本国債も10年ものでやっと定期預金を上回る程度の利回りだ。カナダドルや豪ドルなどの外貨預金で運用すれば比較的高金利を得られるが、為替リスクがあるため、金利収入が相殺される恐れがある。その点、日本企業の配当や株主優待は、株価の動向に左右されない安定的な収入となることから、今後もさらに注目度を高めていくことだろう。

東証1部全銘柄の平均配当利回りは、2014年3月期の配当実績を基準とすると、12月5日現在で1.45%である。これに株主優待と自社株買いが加わるわけで、この数値からも株主還元に対する日本企業の積極姿勢がよくわかる。個人投資家の資産運用におけるインカム重視の傾向と、それに応える企業の還元拡大はこれからもまだまだ続きそうだ。

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(提供: 野村インベスター・リレーションズ

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