今週の特徴:ドイツ10年債利回りとユーロが急騰

今週の為替市場では、ドイツ10年債利回りの急上昇を受けたユーロ高が顕著だった。ユーロ圏のインフレ率の持ち直しとECBの金利上昇・ユーロ高の放置姿勢が背景にある。他方、ドル/円は一旦125円を付けたあと、米雇用統計を控えて待合室にいる状況だ。

■ドル/円:今週レンジ123.76~125.05円(想定より上下1円程度値幅が狭かった)

(前週時点の予想122.5~126.0円)

ドル/円は、週初は前週のドル高基調が続き、2日に一時125.05円の高値を付けた。もっとも、その後はドル利食い売りが持ち込まれやすかったとみられるほか、対ユーロを中心としたドル安傾向もあって上値が抑制され、124円台前半を中心とした横ばい圏内の展開となった。

この間、米経済指標はまちまちで、1日のISM製造業景況指数、3日の米貿易収支は予想比良好な結果となったものの、1日のコアPCEデフレータが予想外に鈍化したほか、ISM非製造業景況指数も予想比悪化した。ADP民間雇用統計は+20.1万人とほぼ市場予想通りだった。

■ユーロ:今週レンジ1.0887~1.1380ドル、135.14-141.06円(予想比大幅上振れ)

(前週時点の予想1.070~1.110ドル、133.0~138.0円)

ユーロ/ドルは、1日のドイツCPIおよび2日のユーロ圏HICPの予想比上振れを受けてユーロ圏のデフレ長期化リスクとECB追加緩和期待が後退したことから、ドイツ10年債利回りが上昇を再開したことから、1.09ドル台から1.11ドル台へ乗せた。

更に3日にはECB政策理事会でDraghi総裁が「市場はボラティリティ上昇局面に慣れるべき」「ボラティリティに応じて金融政策スタンスを変更する計画はない」として、ドイツ10年債利回りの急上昇およびユーロ高を抑制せずむしろ放置したこと、そしてECBの最新の経済予測でも今年のHICP予測が上方修正されたこともあって、ドイツ10年債利回りが更に上昇、4日にかけて1.0%に近づくと同時に1.1380ドルの高値を付けた。

ユーロ/円も、ドル/円が狭いレンジ内で横ばいの中でユーロ/ドルにつれて上昇が続き、136円丁度前後から4日にかけて141.06円へ急上昇した。

■豪ドル:今週レンジ0.7598~0.7819ドル、94.61~96.99円(対円が1円程度上振れ)

(前週時点の予想0.750~0.780ドル、93.5~96.0円)

豪ドル/米ドルは、週初は2日のRBA理事会を控えた利下げ期待もあって、前週の下落基調が続き0.7598ドルの安値を付けた。もっとも、RBA理事会では利下げが行われず、今後の金融政策スタンスについて特段ガイダンスが示されず、ハト派的な結果を期待していた向きの失望を誘い、0.76ドル台前半から0.77ドル台後半へ上昇した。

更に3日には豪1QGDPが市場予想を上回る高成長となったことから、0.7819ドルへ続伸した。ただし4日には、豪4月貿易収支が市場予想を大きく上回る赤字幅となったことから再び豪ドル売り圧力が強まり、0.76ドル台へ反落してきている。

豪ドル/円も、米ドル/円が狭いレンジ内で横ばいだったことから豪ドル/米ドルにつれた動きとなり、94円台前半から3日にかけて一時96.99円へ上昇したが、その後は95円台半ばへ反落してきている。

(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)


来週の見通し:消費大国復活で126円へ

来週は、今晩の米雇用統計結果で水準感が変わってくる可能性もあるが、11日の米小売売上高が最大の注目点で、出遅れている小売売上高も回復を示すと年内利上げ開始期待が再び高まり125円乗せが明確となりそうだ。

他方、豪ドルを巡っては11日発表の豪失業率が注目で、再び上昇基調になると利下げ期待が再燃し対米ドルで安値トライの動きとなりそうだ。ユーロは材料がない中で、ドイツ10年債利回りを睨んだ展開となりそうだ。

■米ドル/円:予想レンジ123.5~126.0円

ドル/円は、11日の米小売売上高が最大の注目点で、出遅れている小売売上高も回復を示すと年内利上げ開始期待が再び高まり125円乗せが明確となりそうだ。 市場では総合で前月比+1.1%、コア(除く食品、自動車、ガソリン、建築資材)でも+0.4%と低調な前月からの加速が予想されている。

また消費関連では12日に6月分ミシガン大消費者信頼感(速報)も発表予定となっている。前月に悪化したこともあり、どれだけ持ち直しが大きいかも注目される。

他方、本邦では8日に4月分経常収支や1QGDP改定値の発表が予定され、経常収支は前月の大幅黒字からは縮小するものの1兆円超の黒字(市場予想は季節調整後で+1兆4510億円)、GDPも今週1日発表の法人設備投資調査の大幅上振れを受けて小幅上方修正(市場予想は前期比年率で速報+2.4%から+2.7%へ)が予想されているが、目先の日銀の金融政策に対するインプリケーションは小さく、かつ現在は市場の注目が米金融政策に偏っているため、円相場には影響なさそうだ。

■ユーロ/ドル予想レンジ:1.105~1.150ドルユーロ/円予想レンジ:137.0~143.0円

来週はユーロ圏関連の材料が殆どない中で、米経済指標を受けたドル相場の動きとドイツ10年債利回りを睨みつつ、どちらかというと強含みの展開となりそうだ。8日にはConstancio・ECB副総裁発言が予定されているが、今週のECB定例理事会での利回り上昇放置姿勢が維持される可能性が高く、どちらかというと利回り上昇とユーロ高材料となりそうだ。

米小売売上高やミシガン大消費者信頼感指数が堅調を示せば、ドル高主導でユーロ/ドルは上値が重くなる可能性はあるが、その場合でも米利回りの上昇がドイツに波及しユーロ下支え要因となる面はあり、ユーロ下落は限定的となりそうだ。最もユーロ安に効果がありそうなのは、ECB高官からの強力な利回り押し下げ発言や、ドイツ利回りの自立的な大幅反落だろう。

■豪ドル/米ドル:予想レンジ0.755~0.780ドル豪ドル/円:予想レンジ94.5~97.0円

来週は豪ドル関連材料が多く、8日に中国5月輸出入統計、9日に豪5月NAB企業信頼感および住宅ローン統計、11日に豪5月失業率と中国5月主要経済指標(小売売上、鉱工業生産、固定資産投資)などが予定されている。

中では豪失業率が注目で、再び上昇基調になると利下げ期待が再燃し対米ドルで4月2日に付けた直近安値(0.7533ドル)トライの動きとなりそうだ(市場予想は6.2%で横ばい)。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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