不動産投資に対するリターンは通常、ネットオペレーティングインカム (NOI) で語られる。この NOI 利回りが高ければ通常、投資リターンの高い不動産投資と判断できる。

ネットオペレーティングインカムは営業利益などと訳されることも多いが、不動産投資の世界ではこの NOI は会計上の営業利益とは意味合いが少し異なる。会計上の営業利益は売上から売上原価を控除し、販売費及び一般管理費を控除して営業利益を算出する。会計上では販売費及び一般管理費の中に減価償却費を含むが、不動産投資の NOI とは減価償却費が控除される前の営業利益なのだ。

NOI 利回りが 5% の物件や 4% の物件というのは、会計的な表現をすれば、「(営業利益+減価償却費) ÷ 不動産投資額」を表した数字だ。しかしながら減価償却費は運用後の節税効果を生むため、重要な経費となる。そこで、今回はこの減価償却費に関して節税の観点から今一度見直してみたい。


減価償却費とは何か

まず、そもそも減価償却費と は何なのか、定義を確認してみよう。減価償却とは有形固定資産の取得原価を、使用できる各会計期間に、あらかじめ定められた一定の計画に基づいて、計画的・規則的に配分するとともに、同額だけ資産の価額を減少させていく手続きをいう。 減価償却費は実際にキャッシュアウトする訳ではなく、非資金支出費用に該当する。

この減価償却費は企業だけでなく、個人事業主が行う不動産事業にも認められる。法人や個人も売上から費用を引いた最終利益額に対して税金が課されるが、減価償却費はその期にキャッシュアウトしていないにも関わらず、その期の費用として認められる。そのため、利益が少なくなり、課税される税金も少なくなる。


土地には発生しない減価償却費

不動産の減価償却費の場合、土地は減価償却費が発生しないというのもポイントだ。例えば底地のような土地だけから構成される収益物件を購入したなら、減価償却費は発生しない。一方で借地物件のように建物だけから構成させる収益物件を購入した場合、購入資産のすべてが減価償却の対象となる。このように考えると、購入資産の建物割合が大きいほど減価償却費が高くなる。


築浅の方が減価償却費は大きい

また、耐用年数は建物の中でも躯体と設備で異なる。さらに、構造によっても異なってくる。事務所で鉄筋コンクリート造であれば耐用年数は 50 年、住宅で木造であれば 22 年となる。

設備については、電気設備は 6 年、給排水等の設備は 15 年で設定されている。償却方法も躯体は定額法で、設備は定率法とすると、設備の場合は、当初の償却額は大きいが、時とともに償却額が減っていく。そのため、建物の減価償却費は築年数が浅いほど高く、年々減っていくこととなる。


築古は儲からないのに税金だけが膨らむ、解決策は?

一棟のアパート経営をしていると、年々、減価償却費や借入金の返済利子が減っていくため、築古になると課税が重くなる。しかも築古なため家賃は安いが、税金は大きいため、キャッシュが手元に残らなくなってしまう。これを上手く回避するには、計画的に大規模修繕することだ。大規模修繕であれば、その金額は一度、資産計上されるため、減価償却費の対象となる。また、修繕によって入居率が改善し、家賃収益も安定する。仮に借入金を用いて大規模修繕を行っても、減価償却費で元本返済をしていけば、借入金の返済にも問題はない。


利益が出ているのであれば減価償却費を活用しよう

賃料総額に対して、減価償却費以外の経費が 3 割未満に収まっていれば、賃貸事業としてまずまずの合格ラインであるといえる。この場合は、うまく大規模修繕を活用して減価償却費を発生させながら、節税していくのが賢い方法だろう。

(提供: Leeways Online

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