小さな経費の見落としが大きな差に

不動産投資のメリットとしてあげられる節税。その中でよく使われる用語に「損益通算」がある。

損益通算をわかりやすく説明すると、個人の本業の所得と、副業の赤字を合算して税金を申告できる仕組みを意味する。赤字を合算できる副業は不動産所得と事業所得、山林所得、譲渡所得の4つだ。不動産投資の副業は不動産所得に分類されるため損益通算ができる。

例えば、年収1200万円のビジネスパーソンが不動産投資をして300万円の赤字が出た場合、給与所得の1200万円から赤字分の300万円を差し引いて計上することが可能だ。確定申告すると、余計に払った分の税金の還付が受けられる。

「とにかく税金を減らしたい、キャッシュを残したい」という方にとって、この仕組みは魅力的だ。

損益通算を最大限に活用するには、経費を漏れなく計上するとよい。不動産事業で認められる経費は、公租公課、損害保険料、修繕費、管理費、減価償却費等がある。その他にも交通費や通信費、新聞図書費といったものも経費として認められる場合もあるが、これらの経費は不動産事業に関連したものしか認められない。例えば、交通費なら不動産セミナーに参加するためにかかった交通費、通信費は管理会社と連絡を取った際にかかった通話料というように不動産事業に関係したものに限定されてしまう。これらの経費は金額も少なく理由づけも煩雑になるため、まずは大きい金額である修繕費や管理費、減価償却費等をしっかり計上することが重要だ。


経費計上した方が「手残りが多くなる」ケースも

ここで不動産事業において会計上の赤字を出すためのポイントなるのが減価償却費だ。減価償却費は非資金支出費用のため実際にキャッシュアウトはしない。例えば、不動産事業において、(不動産収入―減価償却費以外の経費>0)であれば、手元に残るキャッシュは黒字である。さらに減価償却費を加えて、(不動産収入―減価償却費を含む経費<0)であれば、会計上は赤字である。この微妙なバランスが保たれていれば、不動産事業のキャッシュは黒字で会計上は赤字となる。加えて損益計算を行えば所得税も減税されるため、さらに手元にキャッシュが残るという仕組みだ。


多く計上できるはずの減価償却費が少ない理由は?

さらに減価償却費について詳しく見ていこう。減価償却とは有形固定資産の取得原価を、使用できる各会計期間に、あらかじめ定められた一定の計画に基づいて、計画的・規則的に配分するとともに、同額だけ資産の価額を減少させていく会計上の手続きのことだ。減価償却の対象となるのは建物のみであり、土地は減価償却されない。ここで建物は躯体と設備に分けられる。躯体と設備の金額割合は、オフィスであれば、7:3、住宅であれば8:2といったところだ。償却方法も躯体については毎期一定額で償却される定額法が適用され、設備については毎期一定率で焼却される定率法を選択することができる。定率法の特賞としては、築年数が浅いほど償却額が大きくなると言う点だ。つまりオフィスの建物金額の内3割の部分が、また住宅の建物金額の内2割の部分が定率法によって早期に償却されてしまう。設備の償却年数は15年が目安だ。一方で躯体が鉄筋コンクリート造であれば、躯体の耐用年数は47年だ。このため築10年未満の建物であれば、設備の償却額が大きいため減価償却費は大きく計上できるが、築15年以上の建物は設備の償却が終わっているため、減価償却費は少ない。よって、減価償却費を駆使した上述の損益通算は築古物件では適用が難しい。


不動産経営には経費割合の知識が必要

以上、損益通算による節税方法をみてきた。しかしながら、健全な不動産事業であれば、減価償却費は賃料収入の高々40%、減価償却費以外の経費は合算しても賃料の高々30%である。そのため赤字になるというのは、実はかなり厳しい不動産事業であると認識しておいた方が良い。もし赤字になるようなことがあれば、とりあえず損益通算でキャッシュを貯めつつ、空室対策等の次の一手を考えることをお勧めしたい。

(提供: Leeways Online

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