2015年より相続税の基礎控除額が4割引き下げられました。従来該当しなかった方も相続税の対象となる可能性が出てきます。しかし、今回の改正では一部に緩和措置も設けられています。その一つが、「小規模宅地等の特例」です。


小規模宅地等の特例の変更点とは?

小規模宅地等の特例とは、相続開始の直前において、被相続人の事業用または居住用に供されていた宅地のうち、限度面積まで一定の割合を相続税から減額する制度となります。
事業や自宅用の土地に相続税をまともに適用した場合、事業や住居の継続が困難となることを回避する目的があります。

2015年1月1日より特定居住用宅地等の面積要件が240平方メートルから330平方メートルまで緩和され、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等には小規模宅地等の特例の併用もできるようになりました。


メリットは、大幅な相続税の減額

まず小規模宅地等の特例のメリットは、なんといっても80%もの大きな減額にあります。特定居住用宅地等の場合、330平方メートルの土地で路線価が40万円/平方メートルであれば、評価額が132百万円から26.4百万円まで下がります。
減額幅が大きい広大地の評価でさえ65%までの減額が最大であるから、80%もの減額は相当なインパクトがあります。

ちなみに、自宅の面積が400平方メートルある場合には、330平方メートルまでは80%の減額が認められて、残りの70平方メートルは通常の評価額となります。
この場合、相続前に残りの70平方メートルをコインパーキングなどにして利用区分を分けてしまい、賃借権を付けることで70平方メートルの評価を少し下げるというテクニックも存在します。

また2015年から特定事業用宅地等との併用も可能となったことから、親の会社の事業も承継しやすくなったといえます。親が個人事業として賃貸事業以外を営んでいる場合は、その事業で使っていた宅地も80%の減額で評価されます。
仮に特定事業用宅地等が複数あった場合には、路線価の最も高い宅地を選んで400平方メートルまで適用すれば有効な相続対策といえるでしょう。


被相続人の家の上手な活用方法とは?

これまで、特定居住用宅地等における小規模宅地等の特例の適用条件として、被相続人が相続時点に自宅として居住していなければなりませんでした。しかし、2014年からは介護のために被相続人が老人ホームに入って空き家になってしまった場合にも適用が認められるようになりました。
さらに、これまでグレーゾーンであった、内部で行き来できないような二世帯住宅の敷地についても適用が認められるようになります。

一方で注意点もあります。被相続人が老人ホームに入居して空き家になってしまった場合において、他人に貸してしまうと小規模宅地等の特例の適用が受けられません。空き家にしておくのがもったいないからという判断で貸してしまうと、貸家建付地扱いになってしまうので注意が必要です。
貸家建付地の場合、条件にもよりますが2割程度の減額なので、6割の減額分を損してしまいます。

また、二世帯住宅も注意が必要です。相続人が2人いる場合で、長男が二世帯住宅に住み、次男が遠方に住んでいるようなケースが該当します。次男の分の相続財産が無く、土地を長男と次男で2分の1ずつ相続すると、小規模宅地等の特例は長男には適用されますが、次男には適用されません。
しかもこの場合、次男はその土地を実際に利用できずに不公平感を募らせる恐れがあります。親が良かれと思って二世帯住宅にしても、争族の火種になってしまうこともあるため要注意です。

以上のように、小規模宅地等の特例は減額メリットが大きいため、ついその場の活用だけに目が行ってしまいます。
しかしながら、相続人の誰がどんな資産を相続するのか、また次の世代の二次相続の望ましい形はなにか、まで含めて考えなければなりません。面積の限度が限られている特例だからこそ、面積のベストな使い切り方法を考慮して対策を検討するのが良いでしょう。

※この記事は2015年5月11日に掲載されたものです。
提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

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