ミャンマーの経済概況
ミャンマーは米国の経済制裁の一部解除をうけて、昨年来世界の投資家の熱い視線を集めています。日本でも経済界が視察団を組成しミャンマーの訪問を活発化 させています。
昨年の経団連のビジネスミッションに参加した某会社の役員から「まだビジネスのためのインフラが整っていないので進出するのは相当の意気込みが必要」という率直な感想を得ました。裏を返せば、一人当たりのGDPが800ドル程度でカンボジアより若干下回る程度で、ミャンマーの成長ののりしろは多分にあります。
IMFによると、経済構造改革や天然資源分野、製品輸出分野への海外投資の増加により、2013年度のGDP成長率は6.25%に達成する見通しです。ミャンマー経済を下支えするのは総輸出額の40%近く占める天然ガスで、2013年7月に中国へのパイプラインも開通したばかりです。経済構造改革のペースを上回るスピードで中国、アメリカ、韓国、タイなどから外資が流れ込んでいるというのが現状のようです。
2011年度、外資の投資先は主に電力や石油・ガスなどのエネルギー関連が90%以上
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を占め、サービス業や小売業などの進出はまだ少ないですが、ここ数か月の動きだけみても富士フィルムが現地法人を設立、日産がショールームとサービスセンターを開設、NECがオフィスを開設など日系大手企業の進出が相次ぎ、直実に事業の裾野が広がってきています。発展途上国への個人投資の対象の一つとして代表的な不動産投資についてどのようなオプションが考えられるのでしょうか。
ミャンマーの不動産事情
前述のように、経済構造改革が外資の流入に追いついていないのがミャンマーの現状で、不動産についても同様のことがいえます。
ブルームバーグによるとヤンゴンの賃料はニューヨークの水準を超えたと伝えています。
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現在のミャンマーの経済規模から鑑みて、これが事実だとすると
ヤンゴンの不動産は、需給バランスの完全なる不均衡が明らかです。
外資の流入と共に外国人向けの不動産の需要が急増している一方で、外国人向け不動産の供給が全く間に合っていない状況にあります。また不動産の供給が間に合っていないのは、ミャンマー資本のディベロッパーが不在で、法規制上、基本的に100%外資のディベロッパーが参入するのは難しいことが挙げられます。
また建設に関わる熟練のワーカーが不足しており、外資のディベロッパーは二の足を踏んでいます。不動産開発が追い付いていない状況下で稀少な外国人向け不動産に殺到し、不動産市場において発展途上国で陥りがちな経済の二重構造が如実に現れています。外国人向け価格がローカル向け価格と同一であれば、ミャンマー人はヤンゴン市内からごっそりといなくなるかもしれません。
1999年に建設された日本人のレジデンス兼オフィスとしてシンボルタワーとなっているサクラタワーの賃料は、現在1平米あたり約70ドルで取引されています。いち早く進出し、サービスアパートメント「ゴールデンヒルズ」をヤンゴン市内で運営するYKKは、笑いが止まらないそうです。1年で5-6倍の地価の上昇が続き、市内では坪単価200-300万円はざらです。
需要旺盛、供給不足という状況は商機を意味する一方で、やはり未熟な法制度、インフラの未整備、軍事政権の残像が投資家の大きなボトルネックになっています。特に法制度については、100%外資法人名義の70年の定期借地は可能ですが、外国人の個人の取引は不可能というのが法解釈です。特定の条件で外資を許可する外国人コンドミニアム法が2013年6月を議決される予定でしたが、結局いまだ議決には至っていません。