生命保険
(写真=PIXTA)

平成27年1月より、相続税の基礎控除額が従来と比べ、60%減と大幅に下がりました。これにより、従来は相続税の支払い対象外であった人も、今後は相続税がかかるケースが急増すると予想されます。そこで、誰にでも用意できる相続税対策として、生命保険を活用した方法を紹介します。

平成27年1月より、相続税の基礎控除額が従来と比べ、60%減と大幅に下がりました。
これにより、従来は相続税の支払い対象外であった人も、今後は相続税がかかるケースが急増すると予想されます。


<相続税基礎控除額>

改正前:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
改正後:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、相続人が3人の場合、改正前は5,000万円+(1,000万円×3人)=8,000万円が基礎控除として認められていましたが、現行の制度では3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円と引き下げられました。
これにより、以前は、相続税を支払う人は相続全体の4%ほどだったのが、今後は全体の6%ほどに上昇するとされています。

また、相続財産から基礎控除を引いて2億円超を保有する場合は、相続税率は従来の40%より45%にアップし、6億円超の最高税率については55%に引き上げられました。
相続税の納付は現金での一括支払いを原則としています。相続財産がわずかな金融資産と自宅のみである場合は、納税資金の不足から自宅を売却しなければならないケースも考えられます。

特に、地価の高い大都市に自宅を所有していれば、いま一度、資産の再点検が必要です。例えば、相続人が妻と子供2人の計3人、相続財産が3億円の場合、法定相続分通りに相続すると、詳しい計算は割愛しますが、納付すべき相続税は概算で2,860万円となります。
妻は配偶者の税額軽減の特例により相続財産の1億6,000万円までが非課税となりますが、子はそれぞれ1,430万円の負担となり、改正前よりも総額で約560万円の増税となります。

しかし、生活の拠点である自宅を手放して資産を整理するというのは容易なことではありません。納税資金の準備と相続財産評価の圧縮が相続税対策の要であると言えるのではないでしょうか。


生命保険を活用した相続税対策

そこで、誰にでも用意できる相続税対策として、生命保険を活用した方法を紹介します。
生命保険は、被保険者が死亡した際にまとまった保険金が支払われるため、納税資金の準備にも有用な手段となります。
生命保険によって受け取る死亡保険金は厳密には相続財産に含まれず、民法上の遺産分割協議の対象外ですが、相続税の算出時には「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

被相続人が保険料を払い込んだ生命保険の死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まない)である場合、相続人が受け取った保険金から、相続人1人あたり500万円が非課税枠として利用することができ、支払保険金総額から非課税額を控除した部分が相続税の課税対象になります。

ここで重要なのは、死亡保険金の受取人が相続人1人に限定されていても、相続財産としての相続人の人数に500万円をかけた金額が控除される点にあります。前述のケースでは相続人が3人なので、基礎控除分に加えて相続財産から1,500万円が控除可能となります。

もし、現金や他の金融資産の代わりに、1,500万円相当の死亡保険金が設定されている一時払い終身保険を利用すれば、何も対策しない場合と比較して、相続発生時に概算で約262万もの大金を節税することができます。相続対策に一般的に利用されているのは、一時払い終身保険が多く、もともと保有している金融資産を保険商品に転換させるスキームです。

まとまった資金が必要なのがネックかもしれませんが、相続対策を主とした比較的高齢者向けの商品なので、一般的な生命保険よりも健康診断が緩い傾向にあるというのがメリットです。若いうちから終身保険をかけているということでなければ、相続対策としては手軽な保険商品であると言えるでしょう。

消費税に加えて相続税も大幅にアップし、国民の負担は厳しくなりつつあります。
自分の資産と家族を守るためにも、知恵を絞って資産防衛をしていかなければならない時代です。自分の資産はもちろんのこと、これを機に実親の資産についても家族で話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。

※この記事は2015年5月28日に掲載されたものです。
提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

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