(写真=PIXTA)
◆6月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・現物実勢ともにほぼ横ばいで推移した。米国では利上げ観測、中国では利下げ観測と、米中金利差拡大で元安・ドル高となり易い地合いだったものの、中国人民銀行が基準値を高めに設定したため横ばいに留まったと見られる。
◆当面の人民元(現物実勢)は引き続きボックス圏での推移を予想している(取引レンジは1米国ドル=6.12~6.27元)。米国では利上げが視野に入る一方、中国では利下げ局面が続いていることから引き続き人民元は売られ易いが、中国人民銀行が基準値の高め設定を続けると見られることから、弱含みではあっても急落しない相場展開が続くだろうと見ている。
6月の動き
6月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・現物実勢ともにほぼ横ばいで推移した。基準値は当月安値が2日に付けた1米国ドル=6.1225元、当月高値が19日に付けた同6.1104元と小幅な変動幅に納まり、6月末は前月末比0.1%元高・ドル安の同6.1136元で終えた。
一方、現物実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、3日に付けた1米国ドル=6.1980元が当月高値となり、その後は6.20元台で小刻みに変動、17日には当月安値となる同6.2097元を付け、6月末は前月末比やや元安・ドル高の同6.2012元で取引を終えた(図表-1)。
米国では年内の利上げ観測がくすぶる一方、景気に勢いが無い中国では利下げ観測がくすぶっていたことから、元安・ドル高となり易い地合いだったものの、中国人民銀行が基準値を高めに設定したため、下値余地(許容変動幅の下限)が限られ、横ばいで推移したものと見られる(図表-2)。
一方、世界の通貨の動きを見ると6月はまちまちの動きとなった。主要通貨では欧州ユーロが米国ドルに対して前月末比1.6%上昇、日本円が同1.4%上昇と米国ドルがやや安くなった。
新興国通貨でも、ブラジル(レアル)が前月末比2.8%上昇するなど堅調な通貨があった一方、原油価格がやや下落する中でロシア(ルーブル)が同5.6%下落、マレーシア(リンギット)も同2.8%下落と米国ドルに対して下落した通貨も少なくなかった(図表-3)。
なお、5月下旬には、1994年に二重相場制1から管理変動相場制へ移行してから初めて、対日本円で100円=5元(1元=20円)の大台を突破したが、6月はそれを挟んで一進一退の展開となった。
今後の展開
さて、当面の人民元(現物実勢)は引き続きボックス圏での推移を予想している(取引レンジは1米国ドル=6.12~6.27元、図表-4)。
米国では利上げが視野に入る一方、中国では6月28日に2ヵ月連続(前回は5月11日)で利下げするなど金融緩和が続いていることから、引き続き人民元は売られ易い。しかし、9月に習近平国家主席の訪米を控える中で、中国人民銀行は基準値の高め設定を続けると見られることから、弱含みではあっても急落しない相場展開が続くだろう。
米国で仮に予想以上の景気指標がでれば、利上げ時期が前倒しになるとの思惑から米国ドルが上昇し人民元は下値を試すことになると見られるが、今年3月に付けた直近安値(1米国ドル=6.2747元)に近づけばドル売り元買い介入への警戒感が高まるだろう。
一方、中国で景気指標が予想以上に改善すれば、利下げ局面は終わったとの見方が広まって人民元は上値を試す可能性もあるが、7月1日に公表された製造業PMIが横ばいだったことから6月の景気指標が大幅改善する可能性は低く、昨年10月に付けた直近高値(同6.1112元)を突破する力はないと思われる(図表-5)。
尾幸吉郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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