「いつかは金利が急騰し、破産状態になることがありうる」。2015年6月17日、稲田朋美自民党政調会長はそう語り、2020年にはプライマリーバランスを黒字化しなければならないとの認識を示した。
国と地方を合わせた債務残高が、1000兆円を超えた日本。ギリシャやプエルトリコの例を見るにつけ、現在は大丈夫であっても、将来的な国債の暴落や破産が現実味を帯びてきたと感じている方も多いだろう。日本国債のこの先を追ってみる。
これまで「国債暴落」が現実化しなかった理由
たびたび語られてきた「国債暴落」。国債の暴落とは、長期金利の急騰を意味する。金利の上昇により、利払いにあてる予算がさらに増大し、政府の予算が組めなくなる――稲田政調会長はそうした事態を懸念しているのだろう。
国債残高が増える中、国債の暴落がいつ起きてもおかしくないとされてきた。しかし実際には低金利が続いている。
これは、よく知られているように、国内に資金需要が少ない中で国内銀行やゆうちょ銀行などが大量の国債を購入してきたからだ。海外勢の購入は一部にすぎず、国内勢で国債購入を賄えたからこそ金利上昇が起きなかったといえる。
経常収支の黒字が続き、外貨準備高も世界二位。そして、個人の金融資産も多額にのぼる日本だからこそ、これだけ大きな政府部門の赤字を支えることができてきたのである。
この状況を今後も続けられるのだろうか。興味深いデータが2015年6月29日発表された。個人の保有する金融資産の残高が、2014年末時点で1708兆円となり、過去最高を記録したという。1600兆円と言われていた個人金融資産が1700兆円に到達していたのだ。
注目すべきはその伸び率で、2013年度末に比べて5.2%の伸びとなった。一方、国と地方を合わせた債務残高は、2013年末の972兆円から、2014年末には1009兆円と約3.8%の増加を示している。つまり、国債残高の伸びよりも、個人の金融資産の伸びが上回ったのである。
いつかは枯渇するかにみえた国内投資家の国債購入の原資であるが、国債残高が増える以上にその「ふところ」自体が成長すれば、理論的には従来どおり国内勢で国債を消化できる可能性がある。
鍵を握る実体経済の成長
その意味では、国内勢で支えられなくなるのは、経済が停滞し、国債残高が名目GDPの成長率以上のペースで増える場合になる。人口減少が現実化するなか、そうした状況に陥る可能性は決して低くない。
他方、民間に資金需要が出て、国債の金利が上昇する局面も予想される。その場合は、景気回復による法人税の増収も見込める。赤字国債の発行を減らし、それこそ民需中心に政策を転換させればよい。
結局、国債の今後を決めるのは、名目の経済「成長」と国債残高の伸びの関係だ。プライマリーバランスの黒字化も、「成長」がなければ難しい。社会保障費の負担増が予想される中、まずはデフレ脱却を果たせるか、そして一定以上の名目ベースで経済成長を果たせるかが、国債の行く末を決めるといえそうだ。
しかし、この国債の問題、本当は「問題ではない」のかも知れない。先日、公務員の夏のボーナスが支給された。管理職を除く一般行政職の平均支給額が前年夏に比べて約3万3200円(約5.7%)増加し、リーマンショック以降最高の水準になったという。
先進国で最悪の財政状況だと自ら喧伝しながら、その一貫性のなさには驚かれる方も多いだろう。本当に危機的水準であれば、違った対応になるのではないかとの指摘は避けられそうにない。
しかし、あらためて考えてみれば、「円建て」で債券を発行しており、「通貨発行権」がある政府がデフォルトに陥ることは実際にはない。すでに中央銀行(日銀)が国債を買っているという現実もある。マネタイゼーションとインフレで逃げ切る、そうした長期シナリオの可能性も考えておくべきかもしれない。(ZUU online 編集部)
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