家具の大正堂
(写真=HPより)

神奈川県を中心に9店舗を展開する家具店「家具の大正堂」(神奈川県相模原市)の創業は大正元年、今から103年前にさかのぼる。リフォーム事業の歴史も古く、約40年前にシステムキッチン「レイクライン」をトラックで引き売りしたのが始まりだ。

このたび、独自のビジネスモデルを持つリフォーム事業者を表彰する経済産業省「先進的リフォーム事業者表彰」にも選ばれ、事業拡大に向けた取り組みを加速しつつある。

渋谷太紀雄取締役リフォーム営業部副部長
渋谷太紀雄取締役リフォーム営業部副部長


信用がベース

平均1440坪という大型店舗の一角に同社のリフォームコーナーが設定されている。40坪ほどのスペースに並ぶのはキッチンやバス、トイレといった住宅設備。普段買い物に来る地域客がふらりと訪れるようなコーナー作りを目指した。

「リフォームは価格が不透明で高い買い物です。知らない所にそれを頼むには勇気がいる。その点家具店は敷居が低いので話をしやすいと思います」(渋谷太紀雄取締役リフォーム営業部副部長)

家具店は、地域に根差し、信用をベースにした商売をしているケースが多い。リフォーム依頼方法の6割以上が「以前から付き合いがあった所」か「知人の紹介」と、安心感がキーワードになる中、地域密着の強みを生かした展開を続けてきた。

3年前には、新たな柱を作るべく、現社長の渋谷金隆氏の弟にあたる太紀雄氏が事業に参画。本格的なリフォームの強化に動き出す。

翌2013年には5カ年計画を打ち出し、当時のリフォーム事業の売り上げの3倍となる24億円を2018年度の目標に設定した。売り上げは順調に拡大し、前期(2月決算)は12億3000万円と2億円以上の増収を成し遂げた。

なぜ、消費増税後の厳しい時期にもかかわらず増収を実現できたのか。渋谷取締役は「販促を変えた」と戦略を話す。以前はB4サイズのチラシを利用していたが、小売店としてはあまり使わないサイズであった。

そこで、倍のB3サイズに変更。内容もリフォームイメージ型から価格、割引率を明記したメニュー型に変えた。2カ月に1度90万部のチラシを配布するが、反響率は従来の約2倍の5000分の1から7000部の1を獲得している。

大正堂チラシ
反響率は5000分の1~7000分の1

「競合店のチラシを壁一面に張って、いくらなら勝てるかということを比較しました。価格競争型に変えたのです」(同取締役)

リフォームコーナーもリニューアル。本店のさがみはら営業所では、2階にあったコーナーを1階にもってきた。家具購入者に対しての調査では、実に68%が「家具の大正堂」のリフォーム事業を認知していなかったため、お客さんの目に留まりやすい配置、コーナー作りを進めた。

家具を買った人へのリフォーム、リフォームをした人への家具提案、そんな相互交流をより推進する方策だ。

「そもそも工事が必要な家具もあります」と渋谷取締役。壁面収納を壁に取り付ける、空いた場所にタイルを張るなど、家具でありながら工事を有する仕事も行ってきた。リフォームの仕事ができれば、より満足度が高い、住まい空間づくりを行うことができる。

実際、商品としてもリフォームと家具が融合した「クラシコア」という多機能家具を取り扱う。「クラシコア」はキッチン、浴室、トイレといった住設機器を家具でぐるりと囲んだユニット商品。九州大川の家具メーカー大和通商が開発した。

同商品は主に大型改修時に活用する。住まいの真ん中に配置すれば、設備と収納の必要要素を中心部に集約しつつ、回遊動線を作り出す。

「30代の夫婦2人に子供1人、60代の夫婦2人など、クラシコアを中心に間仕切りを付けるだけで、家族構成などに合わせた暮らしの可変が可能になります」(同取締役)

商品は工場組立のため、ユニットの組み立て設置日数は約2日。大幅な工期の短縮が可能だ。

「横浜港大さん橋国際客船ターミナル施設を利用した家具販売も年4回から6回行います」と渋谷取締役。同販売会もリフォーム事業と家具業を連携するイベントだ。リフォーム営業スタッフが必ず参加し、家具販売の知識を身に付けるとともに、リフォーム顧客を招待する場にもなっている。

家具にしろ、リフォームにしろ、幅広い知識が必要なので、両者にまたがって仕事をすることは、実際難しい。ただ、商品や交流の仕組みで徐々に、両者の相乗交換が表れ始めてきた。

「課題もあります。3年前の18人から営業を2倍の36人にしましたので、まだ経験が浅い人が多いですし、顧客の6、7割が新規客で、OBの方を追えていません」(渋谷取締役)

今後は、人材育成を進めるとともに、アフター対応強化にも取り組む方針だ。また、既存の家具店にはもうリフォームコーナー設置余地がないため、単独店の展開も視野に入れる。来年、リフォームの新規店出店を予定している。

「営業だけではなく、コーディネーターや設計担当も増やしていかなくてならない。1店舗あたり、2億5000万円から3億円の売り上げを上げることができれば、5カ年計画を達成できます」

今期目標は14億円。事業強化策が実を結びつつある。

≪会社概要≫
大正堂
創業 1912年
店舗数 9店舗(アウトレット店を除く8店にリフォームコーナー設置)
総売場面積 1万3000坪(平均1440坪)
リフォーム人員数 57人(営業36人、コーディネーター9人、ほか12人)(提供: リフォーム産業新聞 6月23日掲載)

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