(写真=PIXTA)
6月29日、TPP(環太平洋経済連携協定)の締結に必要不可欠な大統領貿易促進権限(TPA)法案にオバマ米大統領が署名しました。TPAとは、米国で議会が承認すれば、交渉の途中経過を議会に報告することなく大統領の責任のもと行政府が通商交渉することができるというものです。これによって、各国での協議が進む見通しとなりました。
TPPで何が変わるのか?
そもそもTPPはどういったものでしょうか。
TPPとは、米国や日本を中心とした環太平洋地域における経済連携協定の略称。TPPの締結によって、TPPを締結した国の間でこれまで輸出入にかかっていた関税が撤廃されることとなる。「自由貿易の促進」を目指すものであるため、対象となるものは貿易商品・サービスの全品目ということになる。
TPPの締結により日本製品よりも安価な商品が海外から多く輸入され、国内の産業が弱体化するおそれも出てくる。一方で輸入と同様に輸出の際にかかっていた関税も撤廃されるため、貿易の自由化がこれまで以上に加速し日本製品の輸出が増えるというメリットもある。
つまり、国際競争力のある商品やサービスはより強く、これまで保護されてきた商品やサービスはより厳しくなるという見方ができる。
では、どの業種が恩恵を受け、打撃を受けるのだろうか。
打撃を受ける業種
保護されてきた産業、つまり、輸入する際に関税をかけて保護してきた産業が最も打撃を受けやすいです。具体的には、農業、農産物、乳製品、それに加工食品といったものが該当します。TPPというとよく話題にのぼるコメは日米間で778%の輸入関税がかけられています。
同様に小麦は252%、チーズといった乳製品は40%~22.4%、それに牛肉は38.5%といった具合です。直接的にはこれらの業種が影響を受けますが、その周辺である農機具といった機器を扱う産業も同様に影響が避けられそうにないでしょう。
国内の農業は専業というよりも兼業農家の方が多く、コメを作り続けるのは"割に合わない"と判断すると設備投資として多額な農機具の販売にすぐ影響が出てきそうです。また農機具だけでなく、肥料や飼料も影響を受けることが予想されます。
さらにこれまで保護されてきた産業で代表的な医療も競争にさらされることが予想されます。自由診療が活発化し、株式会社が医療分野に参入が可能になればこれまで以上に競争が激化していくでしょう。
すでに医療機器は海外製品であふれていますが、医療機器といったモノだけでなく医療サービス全体も市場原理にさらされることになります。1時間以上待って5分しか診療を受けることができないと揶揄されてきましたが、これまでよりもいい治療を受けられる可能性があります。そういう意味では、競争が導入された方が患者にとってはメリットもあります。
恩恵を受ける業種
悪影響を受ける業種ばかりではなく、恩恵を受ける業種も多いです。すでに国際的競争力が高い自動車関連の業種は関税撤廃によりこれまで以上に輸出が加速する可能性が高いです。日米間の関税率は現在2.5%。これがゼロになれば、現在4割を占める日本車の北米でのシェアは今まで以上により高まることが予想されます。
輸出入自体が活発化するという面でいえば、商品の輸出入の際に手数料を受け取る商社も恩恵が大きいと考えられます。関税撤廃により貿易が活発になればなるほど輸出入量も多くなるため、これまで以上に活動範囲を拡大していくでしょう。
打撃を受ける業種ばかりでなく、恩恵を受ける業種も並べてきましたが、あくまでも一般的な話です。個別の企業としてみると、例えば味に特徴のある和牛を扱うなどしていれば、中国といったアジアの富裕層をターゲットとして関税の撤廃により輸出が増えるでしょう。
一般的にはTPPにより海外産の牛の輸入が増えることが予想されますが、それを上回る付加価値を提供できるのであれば、TPPをチャンスに変えることも可能です。(提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社 )
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