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(写真=PIXTA)


コアCPI上昇率はゼロ近傍の推移が続く

総務省が7月31日に公表した消費者物価指数によると、15年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(5月:同0.1%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.0%、当社予想は0.1%)を上回る結果であった。

食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.6%(5月:同0.4%)、総合は前年比0.4%(5月:同0.5%)となった。消費税の影響を除いたコアCPI上昇率は15年入り後、ゼロ近傍の動きが続いているが、その一方で食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(いわゆるコアコアCPI)は2月の前年比0.3%(消費税の影響を除く)から6月には同0.6%まで上昇幅が拡大している。

消 費 者 物 価 指 数 の 推 移

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(5月:前年比▲15.2%→6月:同▲14.2%)、灯油(5月:前年比▲21.7%→6月:同▲21.1%)の下落幅は前月よりも縮小したが、電気代(5月:前年比0.5%→6月:同▲1.5%)が下落に転じ、ガス代(5月:前年比▲1.1%→6月:同▲2.9%)の下落幅が拡大したため、エネルギー価格は5月の前年比▲6.0%から同▲7.0%へとマイナス幅が拡大した。

一方、原材料価格上昇の影響などから値上げが続いている食料(生鮮食品を除く)は、チョコレート(同11.2%)、アイスクリーム(同11.3%)、インスタントコーヒー(同13.6%)、牛どん(同17.2%)が二桁の伸びとなるなど大幅な値上げが行われている品目が目立つ。

食料(生鮮食品を除く)の上昇率は3月の前年比0.9%から4月に同1.5%へと大きく高まった後、5月が同1.6%、6月が同1.7%と徐々に伸びを高めている(消費税の影響を除くベース)。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.68%(5月:▲0.59%)、食料(生鮮食品を除く)が0.36%(5月:0.34%)、その他が0.42%(5月:0.35%)であった。

消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解


物価上昇品目数の割合は6割を上回る

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、6月の上昇品目数は329品目(5月は332品目)、下落品目数は149品目(5月は145品目)となった。

上昇品目数は前月から若干減少したが、上昇品目数の割合は62.8%(5月は63.4%)と引き続き60%を上回っている。下落品目数の割合は28.4%(5月は27.7%)となり、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は34.4%(5月は35.7%)であった。

食料以外でも衣料、トイレットペーパー、テーマパーク入場料、月謝類など、幅広い品目で値上げが行われている。コアCPI上昇率は前年比でゼロ近傍の動きが続いているが、品目数でみれば上昇品目数が下落品目数を大きく上回っており、物価上昇の裾野は広がっている。

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」


全国のコアCPIも7月にマイナスの公算

1 5年7月の東京都区部のコアCPIは上昇率が前月から0.2ポイント縮小し前年比▲0.1%となり、13年4月以来2年3ヵ月ぶりのマイナスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:0.0%、当社予想は▲0.1%)を下回る結果であった。

電気代(6月:前年比▲3.6%→7月:同▲6.7%)、ガス代(6月:前年比▲3.3%→6月:同▲7.2%)、ガソリン(6月:前年比▲13.2%→7月:同▲15.2%)、灯油(6月:前年比▲16.0%→7月:同▲17.3%)の全てが前月よりも下落幅が拡大したため、エネルギー価格の下落率が6月の前年比▲5.1%から同▲8.3%へと大きく拡大した。

また、これまで上昇ペースの加速が続いていた食料(生鮮食品を除く)は前年比1.4%となり6月の同1.6%から伸びがやや鈍化した。

消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.57%(6月:▲0.35%)、食料(生鮮食品を除く)が0.29%(6月:0.33%)、その他が0.19%(6月:0.12%)であった。7月の東京都区部の結果からすれば、7月の全国のコアCPIは13年4月以来、2年3ヵ月ぶりのマイナスとなる可能性が高い。

原油価格(ドバイ)は1月の40ドル台前半から60ドル台まで上昇したが、7月に入ってからは再び下落基調となり、足もとでは50ドル台前半で推移している。原油価格の下落を受けてガソリン店頭価格も再び低下しており、エネルギー価格の大幅下落は秋頃まで継続することが見込まれる。

一方、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっており、原材料価格の上昇に対応した価格転嫁はすでに幅広い品目で行われている。

エネルギー価格の下落幅が拡大する一方、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(いわゆるコアコアCPI)の上昇率が高まっていることは基調的な物価上昇圧力の強さを示したものといえるだろう。現時点では原油価格(ドバイ)が60ドル程度まで戻ることを前提として年末までに再びプラスになると予想している。

ドバイ原油価格

斎藤太郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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