タワーマンション
(写真=PIXTA)


タワーマンションは、なぜ相続対策になるのか

タワーマンションが相続対策となる理由は、市場価格と相続税評価額の差が大きく、保有資産の評価額を下げることができるためです。同じタワーマンションでも条件の良い部屋ほどその差額は大きくなる傾向にあります。一方、マンションの相続税評価額は条件に関係なく、土地と建物の価格の合計で決まる。土地価格も建物価格もそれぞれの全体の価格に専有面積案分を乗じて決定します。

では、タワーマンションの市場価格はどのようにして決まるのかを詳しく見ていきます。価格決定は、日照や眺望、景観の良否、部屋の位置、室内の仕上げ、専有面積の間取りの状態、免震構造か否かなどの複数要因が関係します。同じタワーマンションであっても階数や位置によって日照や眺望、景観が異なるため、例えば最上階で南東角部屋住戸などは市場価格が高くなる傾向にあります。

しかし相続税評価額では、専有面積が同じであれば「最上階で南東角部屋」も「2階の北向き部屋」も同額になるのです。そのため条件の良い部屋の場合、相続税評価額が市場価格の2~3割になることもあり、大幅な節税効果が生じます。


節税効果の高いマンションの選び方

重要なのは市場価格と評価額のギャップですから、ブランド力のあるマンションはさらに大きな節税効果が期待できます。例えば、大手不動産の物件には定評があり、一般的に市場価格が高くなることが多いです。ブランド価値は相続税評価額には反映されないため、市場価格と評価額のギャップは一層大きくなります。

さらにタワーマンションの場合、「総合設計制度」といって、市街地の環境整備のため一般の通行者が利用できる広場を敷地内に設けることにより割増容積の許可を受けているケースがあります。この制度が適用されると、例えば容積率が300%から400%まで上昇します。容積が割増されれば、多くの戸数のマンション建築が可能となるため、一人当たりの共有持ち分の割合は必然的に小さくなります。総合設計制度が適用されていないマンションより適用されているマンションの方が土地の評価額が下がります。一般的に総合設計制度が適用されている場合、敷地がゆったりとしており、グレード感が高く、市場価格も高くなります。割増容積は相続税評価額には反映されないため、これも市場価格と評価額のギャップを大きくする要因となります。


注意すべきは税務調査

しかしながら、気をつけないといけない点もあります。それが、納税後の税務調査です。税務調査が入った場合、伝家の宝刀、財産評価基本通達6項に基づき国税庁が評価額を見直すケースです。あまりにも市場価格と評価額のギャップが激しいと、市場価格が評価額とされてしまいます。例えば、市場価格1億円のマンションが2500万円で評価されていたとしても、後から評価額が1億円にひっくり返され、不足分が課税されるということです。

もともと相続税評価額を下げるには、小規模宅地などの特例や広大地、貸家建付地など、制度上認められた減額方法があります。しかし、このタワーマンションの場合は、たまたま市場価格と評価額に大きなギャップが生じているだけです。法律を作った際、タワーマンションというものが無かったため、このような現象が起こり得るのです。

そのため、他の相続税対策と異なり、税務署から目をつけられやすいです。市場価格と評価額のギャップが大きく、魅力的な相続対策なだけに飛びつきやすいですが、購入後のシナリオも検討した上で専門家に相談する必要があります。 (提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

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