東京五輪関連株が新たなステージに踏み込みそうだ。2520億円という膨大な工費が批判されて「ゼロベース」(安倍晋三首相)から見直すことになった新国立競技場の建設整備計画は9月にも新プランが公表される見通し。

東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる競技場の新整備計画策定は、「あと5年ではなく、もう5年しかない」(同)2020年の五輪開催に向けたオリンピック・プロジェクトがインフラ面で具体的に動き出す第一歩になる。

7月24日には大会のポスターなどに使われる公式エンブレムが決定。軟地合いにもかかわらず、27日、28日と東京五輪工事関連でのセメント需要増などを材料に太平洋セメント <5233> が連日で高値を更新したほか、28日には大林組 <1802> をはじめ逆行高に進む建設株も浮上している。五輪関連株の間から、株価上昇の狼煙(のろし)は上がった。

五輪関連株の浮上条件が整ってきた。2013年9月に東京五輪の20年開催が決まってから1年10カ月が経過。この間、折に触れ市場テーマとしての「五輪」はマーケットを沸かせてきた。

7月24日には大会の公式エンブレムが決定。巨額の建設費が大問題になって、官邸主導で一から見直すことになった新国立競技場の整備計画は9月に新たな建設計画が公表される見通しだ。

整備計画再検討のための関係閣僚会議 <21日> で安倍首相は「できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を作っていく必要がある」と発言した。

先読みを争うのが株式マーケット。「現実的にベストな計画」と首相が言明した以上、もう見直しすることはない9月の新整備計画決定を待つことなく、株式市場はこれまでの「理想買い」から、インフラ整備が本格的にスタートすることで「現実買い」人気が盛り上がる局面に移行する第1歩になるだろう。

「東京2020組織委員会」がまとめた準備から終了までのロードマップ(工程表)を見ると、15?16年は計画立案フェーズの第1段階。この踏み出しが大会機運の醸成と成功につながる大きなカギを握る。株価も五輪準備にかかわる各種イベントに敏感に反応しそうだ。

当面、最も注目されるセクターはインフラ関連だ。東京五輪の競技施設建設にセメント需要が拡大するとみて、大平洋セメントは28日、409円と新値追い。

新国立競技場の整備計画が決まると、今度は選手村の建設、道路の整備、首都圏の鉄道整備、空港整備、老朽化インフラの建て替えなど幅広いプロジェクト推進が現実の課題として持ち上がってくる。そのほとんどに建設会社がかかわるケースが多い。

とりわけ、大手ゼネコン4社やNIPPO <1881> をはじめとする道路会社の存在感がマーケットで存在感を強めていくのは確実。


大手ゼネコン各社、1Q決算も支援材料

旧・国立競技場を施工した実績と首都圏圏での受注比率が高いことから、五輪関連株では本命視されている大成建設 <1801> は東京開催が決まった13年9月に大活況に沸いた。

その後の調整を経て14年2月から再び上昇トレンドを形成したものの、今年に入ってからは720?740円台を上限とするもみ合い相場となり、足場固めの様相だ。750円台に乗せると上放れから800円台に突き進むだろう。

値もちがよい大林組 <1802> や清水建設 <1803> も妙味大。8月6?7日に大手ゼネコン各社は今3月期第1四半期(1Q=4?6月)決算を発表するが、これも株価の支援材料。PBR <株価純資産倍率> が0.7倍の東亜道路工業 <1882> など道路株は解散価値を大幅に下回っている。中期仕込み場だ。(7月29日付株式新聞掲載記事)

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