imasia_5027747_S
(写真=PIXTA)


結果の概要:住宅着工件数は07年10以来の高水準

8月18日、米国センサス局は7月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は、120.6万件(前月改定値:120.4万件)となり、市場予想の118.0万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を上回った。

一方、住宅着工件数の伸び(前月比)は+0.2%(前月改定値+12.3%)となり、前月数値が上方修正されたこともあり、市場予想(+0.5%)は下回った(図表1、図表3)。

住宅着工に先行する住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は、111.9万件(前月改定値:133.7万件)と、前月から大幅に減少、市場予想(122.5万件)も下回った。この結果、住宅着工許可件数の伸び(前月比)は▲16.3%(前月改定値+7.0%)と2桁のマイナスとなり、市場予想(▲8.0%)も下回った(図表2、図表5)。

住宅着工件数


結果の評価:住宅許可件数は集合住宅の落ち込みから減少

住宅着工件数は、6月が117.4万件から120.4万件に上方修正されたこともあり、前月比でみた伸びは大幅に鈍化した(図表3)。もっとも、件数は07年10月以来と7年9月ぶりの水準となったほか、前年比も+10.1%と2桁の増加を維持しており、住宅着工の好調は持続している。

住宅着工件数の内訳をみると、一戸建てが78.2万件(前月:69.3万件)、集合住宅が42.4万件(前月:51.1万件)と、集合住宅が前月から減少する一方、一戸建てが大幅に増加しており、7月は、集合住宅が牽引した前月とは対照的に一戸建てが好調であった。

次に、住宅着工件数(前月比)の地域別寄与度をみると、北東部が7月は▲5.1%ポイント(前月+7.4%ポイント)と前月の反動もあって大きなマイナス寄与となった(図表4)。

住宅着工件数(伸び率)

住宅着工件数の先行指標である住宅着工許可件数は、07年7月以来となった6月からは大幅に減少した。許可件数の内訳をみると、一戸建てが67.9万件(前月:69.2万件)、集合住宅が44.0万件(前月:64.5万件)となったほか、前月比寄与度でも、許可件数全体の▲16.3%のマイナスのうち、集合住宅が▲15.3%ポイントとなり、集合住宅の下落の影響が大きいことが分かる(図表6)。

集合住宅が大幅に落込んだ要因としては、ニューヨーク州で、賃貸集合住宅の建設を行う開発業者の固定資産税を控除する優遇措置(421a)が6月15日に期限を迎えたため、それまでの許可申請の駆け込みの反動がでたとみられる。

同優遇措置を巡っては、期限延長に伴う内容の見直しで市長であるブラシオ氏と州知事であるクオモ氏との対立が深まっていたことから、不透明感が高まっていた。市長は高級コンドミニアムの建設に対する優遇を抑制し、低所得者向けの建設を促すような条件変更を求めたほか、建設費用を抑制するために建設業労働組合に現行賃金以下で建設を請け負うように求めたのに対し、知事は労働賃金の引き下げなどに消極的な立場をとっていた。

結局、同優遇措置は、15日に一旦失効したものの、23日に6ヵ月以内に開発業者と労働組合で新たな賃金水準で合意することを条件に4年間の延長が決まった。このため、不透明感は依然として残るものの、北東部の集合住宅建設は今後緩やかに回復するとみられる。

住宅着工許可件数(伸び率)

窪谷浩
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

【関連記事】
【6月米住宅着工、許可件数】集合住宅主導で予想を大幅に上回る増加
米国住宅市場の動向-漸く本格的な回復か
【5月米住宅着工、許可件数】着工件数の減少は、前月の大幅増加の反動。
【7月米雇用統計】堅調な雇用の増加は持続、賃金の伸びは依然として緩やか
【6月米雇用統計】9月の政策金利引上げを確信させるには程遠い内容