日本のshowroom

ラグジュアリーの概念が変わった

――富裕層マーケティングで最も重要なこととは何でしょうか。

この25年の間にラグジュアリーの概念そのものが変化を遂げていると思います。25年前当時はブランドのロゴがついているかということが重要で、ときにはロゴの方が商品の品質よりも重要視されていた時代ではなかったでしょうか。マークをつけていること自体がステートメントであったという時代だったと思います。

現在は変わっています。ラグジュアリーとは、上質を求め時間のゆとりを持つことになったと考えています。

もちろんブランドマークやロゴそのものがまったく重要視されなくなったというわけではないですが、「ブランドロゴ=(イコール)ラグジュアリー」という単純なものではありません。その商品も大事ですが、その商品を使っている自分の時間の豊かさ、友人や家族と過ごす時間こそがラグジュアリーという時代になったと思います。

最近ではさらに進化しており、自分とブランドとの関係性が重要になっていると感じています。つまり、自分の考え方がその商品やブランドが持っている考え方の本質と一致しているのかどうかということです。皆と同じものが欲しいというよりは、ユニークであるか、自分にマッチしているか、ブランドが目指している価値観と自分の考えが一致しているか、そのブランドは何を象徴しているのか、そしてそのブランドを身につけることによって自分に誇りを持つことができるかどうか、という考えを持つようになっています。私たちもそれを意識して、消費者とコミュニケーションをしないとなりません。レクサスというブランドはどういう理念や哲学を持ち、企業としてどういう理念や哲学を持ち、それを消費者の方が共感し、誇りに思ってもらえるかどうか、その方向性の一致というのが非常に重要になってきています。

(日本では、2005年に展開が始まったレクサスブランドだが、2014年の販売台数は4万4,000台を超え、4倍超にまで拡大している)

――日本でのレクサスブランド展開で重視していることは何ですか。

1つの強みになっているものは、『おもてなし』の精神です。ディーラーにお客様が入ってきたときの『おもてなし』もありますし、車に乗り込んだときに、車がドライバーを歓迎するという意味での『おもてなし』も重要視しています。例えば、夜、車に鍵を持って近づくとドアノブが徐々に明るくなることも、『おもてなし』のお迎えです。そういうところが他のブランドと違うということを消費者にさらに伝えていきたいです。