シングルモルト
(写真=PIXTA)

『シングルモルト』とは、単一蒸留所での原酒のみで作られたモルトウイスキーのことを指す。モルトとは大麦麦芽のこと。つまり、モルトウイスキーとは、大麦の麦芽100%で造られたウイスキーのことである。モルトウイスキーは香り豊かで個性的な味わいがある。

モルトウイスキーとは別に、トウモロコシなどの穀物を原料にしたグレーンウイスキーという種類もある。軽やかですっきりとしたシンプルな味わいが特徴だ。なお、複数の蒸溜所のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものは『ブレンデッドウイスキー』と呼ばれている。

“ブレンデッド”がバランスのとれた味や香りを追及しているのに対し、“シングルモルト”はその蒸溜所の個性やこだわりがそのまま反映されているのが特徴だ。


蒸留所のエリアは、大きく分けて5地区

スコットランドには100を超える蒸留所がある。酒類生産免許に関する規制の違いに基づいて、かつてはハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラの4地区に分類されてきた。しかし、現在ではハイランド地域の、特に蒸留所数の多いスペイサイドを独立させて、5地区に分類する方法が主流である。(オークニー諸島などの島嶼部「アイランズ」を含めて6地区にする場合もある)


エリア別の特徴を覚えて、こだわりの世界を楽しもう


ハイランド

約40の蒸留所がある。製造されるウイスキーはさまざまで、共通する特徴を見いだすのは難しいとされているが、全般的には軽やかで飲みやすい味わいである。


ローランド

スコットランドの首都エディンバラがある、かつては多くの蒸留所があったエリアだが、今は衰退し操業しているところはわずかである。他のエリアが蒸留を2回しか行わないのに対して、かつてのローランドは3回蒸留を伝統としていた。しかし、現在3回蒸留を行っているのはオーヘントッシャン蒸留所のみである。穏やかな風味を特徴としている。


キャンベルタウン

今では2つの蒸留所しか残っていないが、かつては30を超える蒸留所が存在したモルトウイスキー造りの中心地であった。「香り豊かで、オイリー、塩っぽい風味を持つこと」がこの地域の特徴とされている。


アイラ

ウイスキーの聖地といわれるアイラ島の海辺には、8つの蒸留所が建てられている。この地域は気候が温暖で大麦の栽培に適しており、ピート(ヒースというスコットランド北部の原野に多い野草や水生植物などが炭化した泥炭のこと)が豊富で良質の水が手に入る。どの蒸留所も強烈な個性があり、共通点を見つけるのは難しい。


スペイサイド

スコットランドに存在する蒸留所の約半数、およそ50の蒸留所がある地域で、大麦の収穫量が多くピートが豊富な場所だ。全体的に華やかな甘みをもっているのが特徴で、最もバランスに優れた銘酒が揃っていると評されることもある。


アイランズ

オークニー諸島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島にある、6つの蒸留所を総称して指す。単純に蒸留所がある島の地理的な分類にすぎないので、共通する特徴はない。


シングルモルトの素晴らしさを堪能できる飲み方とは

ウイスキーの飲み方に正解などというものはない。オンザロックでも水割りでも、ハイボールでも構わない。要は、お気に入りのスタイルで飲めばいいのだ。ただし、味わい深い『シングルモルト』の世界を楽しむ飲み方はストレートに尽きる、と断言しよう。グラスはロックでもショットでも構わないが、香りを楽しむという意味では、ワイングラスを小ぶりにしたようなテイスティンググラスが最適だ。バーテンダーにリクエストしてみるといいだろう。

忘れていけないのがチェイサー(ミネラルウォーター)の存在である。もともとシングルモルトはアルコール度数が高いため、ストレートで飲めば当然酔いやすく、舌も麻痺しやすい。それを避けるためにもチェイサーは必要である。


果てのないシングルモルトの世界へ出かけよう

限られた字数の中で、シングルモルトを語り尽くすことは難しい。しかし、このコラムの知識で、まずはシングルモルトの世界のドアを開けることは可能だ。味覚はもちろん、視覚や嗅覚によっても愛でることのできる奥深い世界を学び、そして何よりもシングルモルトを心から味わっていただきたい。(提供: Vortex online

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