ソフトバンクの孫正義社長がインド出身のニケシュ・アローラ氏を後継者候補にしたことが、大きなサプライズとして報じられた。孫氏をもってして「私をはるかに上回る才覚を持つ」と言わしめるニケシュ氏は、インドの超一流大学卒業後に渡米。ボストン大学などで学んだ後、ドイツテレコム、T-Mobile、Googleで活躍した。そうそうたる経歴の持ち主である。

さらにグーグルの新CEOであるサンダー・ピチャイ氏もインド出身だ。彼らの例が象徴的だが、欧米、特に米国ではインド人のCEOが急激に増加している。スタンダード・アンド・プアーズ社のデブン・シャーマ氏、モトローラ・モビリティのサンジェイ・ジャ氏、ペプシコのインドラ・ヌーイ氏……。なかでもヌーイ氏は“米ビジネス界最強の女性”としてフォーチュン誌にも取り上げられている。

英語と数学に強いが、平均収入が低く出国は自然な流れ

中国と並んで10億を越える人口を抱える大国・インド。分母が大きいということは、「人材の宝庫」ということでもある。

しかし中国とインドが決定的に違うのは、インドがかつて英国の占領下にあったため公用語が英語であるということだ。“インド英語”と呼ばれるほど独特な発音をする彼らだが、コミュニケーションはきちんととれるし、英語での思考に慣れている。この英語思考がIT時代にマッチしたと言えるだろう。プログラミング言語はほぼ100%英語思考で、英語で記述されるからだ。

ただ、英国が占領下に置いたのはインドだけではない。アジアやアフリカなど世界中に「英語圏」を作ったが、今のところインドに匹敵するような人材輸出国はない。

彼らは英語が話せるだけでなく、もともと数字にも強い。そもそも「ゼロ」という概念が発見されたのは5世紀前のインドといわれているし、算用数字の起源はインド数字だ。また「インド式数学」は数年前から日本でも注目されている。

さらにインドでは、高い収入を得られる職を得る機会は限られている。1人当たり年間平均年収所得は10万円ほど。貪欲さがエネルギーになってもおかしくない。またインドは米国にも勝るとも劣らない「ヒーロー」大国。平均的には貧しいインドだが、映画制作が非常に盛んで、制作本数も観客総数も世界一多い。そこでは、数多くのヒーローの活躍が描かれ、映画スターも誕生。彼らは国民の平均収入とは比べ物にならない巨万の富を得る。「インディアン・ドリーム」が高いモチベーションとなるのだ。

インドの人材が米国などで注目され始めたのは20年ほど前。当時はまだ発展途上で、有能な人材は海外に出るしかなかった。そういう環境と、米国で、企業で評価されるのに十分な能力を持った人材が次第に評価され、出世したのはおかしな話ではないだろう。(ZUU online 編集部)