住宅診断
(写真=PIXTA)

高齢化などの影響による空家率の増加などの問題を抱える住宅不動産市場。こうした課題に対応するために、国土交通省も動き出している。中古住宅流通を促進することを目的にした、民間事業者等と金融機関などが、市場の活性化や拡大に向けた基本的方向や取組課題を共有する動きはその一つだ。

この国土交通省が音頭をとって推進した議論のとりまとめが公開。「業態転換支援事業」や「住関連情報サービス事業」を行うハイアス・アンド・カンパニーのシンクタンク「ハイアス総研」による、中古住宅不動産の動向についての分析を、 前回 に続き紹介する。


中古市場の活性化

不動産取得は消費から投資に変わる(1)でも触れたように、家計資産の中核である住宅不動産がその価値を適正に評価され、換金化がしやすくなるよう流通・活用促進されるために、①中古住宅の評価の適正化、②中古住宅の質に対する安心の付与、③市場の透明性・信頼性の向上、④住宅ストックの活用という4つの課題が提示されています。

あらためて①から④について、それぞれに関わる関係者の範囲とその中身を考えると、①評価の適正化とはすなわちルール作りとその共有・遵守です。いわば業界のなかのテーマといえます。また、④のストック活用については、地域全体の中で個別の建物がどのように活かされるかという視点から考えられるべきもので、個別の不動産所有者がそれぞれ考えればよいというものではありません。

これらと違い、②質に対する安心の付与、③透明性・信頼性の向上という2つは、住宅不動産を取得しようとする消費者と住宅を提供する事業者の2者に関係あるテーマであり、ラウンドテーブルの議論が具体化した際に、直接消費者に関わってくる内容です。


安心の付与と透明性・信頼性の向上に向けた動き

政府・与党は、専門家による住宅診断と仲介業者による販売時の説明を義務付けることで消費者の不安を取り除き、中古住宅市場の活性化を目指す、といった趣旨の報道が4月にありました。これは、中古住宅を取引する際に「住宅診断(インスペクション)」を義務付けるという動きです。

インスペクションとは、住宅の耐久性や劣化状況を「インスペクター」と呼ばれる住宅診断の専門家が第三者的な視点で点検する仕組みです。欧米では当たり前になりつつありますが、日本ではまだまだです。中古住宅の取引にあたって住宅診断が行われるようになれば、事前に家の状態について専門家の意見が聞けます。ほかにも取引対象の住宅不動産の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所や改修にかかるおおよその費用などがあらかじめわかるようになります。

こうした情報は、これまで中古住宅の取引に際してほとんどわからなかった情報であり、もしこの情報を手に入れることができれば不動産の資産価値がわかり、買い主にとって大きな安心感につながるはずです。また、売主側としても、契約した後になってから瑕疵(隠れた不具合)についてのトラブルに巻き込まれることが少なくなるはずですし、丁寧に使っていた状態の良い不動産が築年数によらず適正に評価されることにもなるでしょう。