インスペクションの普及で不動産取得は消費から投資に変わる
先に示したように、きちんと検査をして結果情報を開示する事で,安心が与えられ、取引の透明性が高まると考えるとすぐにでも実施すればよいのですが、実際にはなかなか普及していません。
取引を早く進めて終えたいと思惑をもった関係者(例えば売主や間に入る仲介会社など)からすれば、時間と費用がかかり、さらに何か問題があれば売値が下がる、場合によっては修理などをしてから販売,引き渡しをすることになりかねない、そんな手続きをあえて踏む事は考えにくいというのが現状です。ほとんどが「現況有姿」、つまり、「今見たままの姿で買ってください」となっています。そのような現状において「義務化」という議論が浮上してくることは大変に大きな変化といえます。
もちろん、まだ議論の段階であり、例えば住宅診断内容の基準作りも重要です。そしてインスペクターの養成と数の確保など普及への課題も多いと思います。
しかし、検査の実施と情報の開示が進む事で、住宅の劣化状況が透明化されて、中古売買価格へ反映されるようになれば、一般消費者にとっては住宅不動産の性能についての関心がもっと高まるはずです。そして建てた後も価値を落とさないために維持・メンテナンスの質が上がっていくかもしれません。さらに言えば、流通に耐えられないレベルにまで劣化した住宅をそのまま市場に流しても、その価値が明らかになることでいずれ中古市場に出られなくなっていくでしょう。
このような循環がおこることで、「売れるかどうか」という、住宅不動産の取得が使い切りの「消費」であった時代には考えられなかった視点が定着し、よりよい性能の不動産を取得し、きちんと運用することで、期待とおりの値段で売る事が出来る、そのような出口を意識する「投資」的な視点が必要となる市場に変わってゆくと考えられます。
ハイアス総研:2013年6月1日に設立。 ハイアス・アンド・カンパニー株式会社 の調査・研究開発部門として住宅消費者や住宅不動産業界・事業者が直面するさまざまな課題の抽出力をさらに高め、住宅消費者・事業者双方に有効な解決策の提示、その解決策の実行・推進を視野においている。
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