保険は、万が一の時のために備えるものという印象が強いと思うが、保険も金融商品であり、資産運用の対象でもある。かつてのバブル期には、予定利率が5%を超えており、15年から20年程度の一時払いの保険商品だと、支払った保険料の2倍以上の満期保険金を受け取れる商品もあったほどだ。

最近では、銀行や証券会社も運用商品として保険を売るようになり身近になったが、依然商品内容がわかりにくいとの声も聞かれる。そこで、今回は、運用商品としての保険に加入する場合の注意点について解説する。

運用商品としての保険

保険には、いわゆる保障性の高い「掛け捨て」と呼ばれる商品と、貯蓄性の高い商品とがある。前者としては「定期保険」があり、非常に安い保険料で高い保障が得られる。ただし、途中解約しても解約返戻金はわずかであり、満期が来ても支払った保険料は戻ってこない。後者では、「終身保険」や「養老保険」が代表的な商品だ。これらの保険は、時期にもよるが、途中解約してもある程度の保険料は戻ってくる。また、養老保険では満期に支払った保険料以上の満期保険金を受け取れるのが一般的だ。運用商品としての保険という場合、この貯蓄性の高い保険を指す。

保険料の支払い方法

保険商品には、毎月保険料を支払うタイプの保険と、契約時点で一括して支払う一時払いの保険とがある。毎月払いの保険は、大金がなくとも保険に加入できるというメリットがある。一方、一時払いは、はじめから大きな金額で運用ができるのでリターンが大きい。一般的に運用性の保険商品という場合一時払いが多い。

『終身保険』のメリット・デメリット

終身保険は、期限なく死亡した場合に保険金が支払われる保険である。特に一時払終身保険は、定期預金などに比べ運用利回りがよく、一定期間経過後は支払った保険料以上の解約返戻金が受け取れるので、資産運用としても有効である。

また、生命保険金は、みなし相続財産として500万円×法定相続人数までは非課税なので、税制上のメリットもある 。一方、維持コストがそれなりに掛かるので、短期で解約する場合には損失が発生するというデメリットがある。

『養老保険』の運用商品としての魅力は下がっている

養老保険とは、保証期間内に死亡した場合に保険金が支払われるほか、満期時にも保険金が支払われる保険である。予定利回りが高い時期には、貯蓄商品として人気があったが、低金利の長期化により元本割れすることがあり、運用商品としの魅力は少なくなっている。

『個人年金保険』のメリット・デメリット

個人年金保険は、例えば、60歳から毎年100万円を受け取れるというように、年金形式で保険金を受け取れる商品である。年金形式で受け取るため、運用期間が長くリターンも大きい。退職金を一時払いで支払い、年金形式で受け取ることができるので、計画的な運用ができる。

また、公的年金の支給開始年齢が引き上げられてきているため、そのつなぎ資金としても注目が集まっている。一時的に大金が必要な場合など、途中解約すると元本割れすることがあるので、自由度が低いというのがデメリットである。

『変額終身保険』は運用の成否で対応を変える

終身保険としての性質はそのままで、運用を株式などで行う保険である。株価の変動などにより保険金額、解約返戻金が増減するため、「変額保険」と呼ばれている。運用実績によって大きなリターンを得られる期待がある反面、株価が下落するなどすると、大きく資産価値が毀損されるので注意が必要である。

ただし、死亡保険金は保証されるため、運用がうまくいけば解約してリターンを受け取り、運用がうまくいかなければ保険として割り切るという使い分けができる。

『変額個人年金保険』はあくまで余裕資金での運用を

個人年金の運用を株式などで行う保険である。変額終身保険と同様、運用実績により、将来受け取る年金や解約返戻金が増減するので、インフレによる資産価値の減少のリスクを解消することができる商品である。

ただ、老後資金という点を考えると、万が一運用実績がよくないと、受取額が減ってしまうので、あくまで余裕資金で運用することが望ましい。最低保障額を設定している保険商品もあるので、加入時にはその点も確認しておくとよい。

『外貨建終身保険』は為替手数料の高さに注意

外貨建終身保険は、運用を外貨で行う終身保険である。金利が高い国の通貨で運用することで高い利回りが期待できる。ただ、為替相場により、資産価値が高まる場合と資産価値が下落する場合があり、為替リスクがある。また、日本円に替えるための為替手数料や維持管理にかかる費用が高い点もデメリットである。

『外貨建個人年金保険』は為替の影響をより受けやすい

外貨建個人年金保険は、運用を外貨で行う年金保険である。基本的な仕組みは、外貨建終身保険と同じだが、年金の場合、長期で年金を受け取るので、為替の影響もより大きく受けやすい。

以上のとおり、運用商品としての保険には、いろいろなものがある。ただでさえ、保険の内容は複雑なので、よくわからないままに保険商品に手を出すと思わぬ損失を被りかねない。しっかりとメリットとデメリットを把握した上で、余裕資金で行うというスタンスで挑むことが大事である。 (ZUU online 編集部)