相続が少なくなる人に時間をかける

60代でお嬢様たちを集めて相続について家族会議、というのはちょっと仰々しくてなかなか難しいでしょうから、まずは同居をしていて物理的に話しやすいご長女に日頃から相続時の分割割合について話しておかれることをおすすめします。

ご自身が誰に何をいくら相続させたいかにもよりますが、例えば現状これだけ 長女に 生前贈与しているので、相続時には自宅の土地建物等財産は次女の相続分を多くするなどということです。また同居の長女に自宅の土地建物を相続させる場合は、より時間をかけて次女への説明が必要になるでしょう。相続分が少なくなる人により時間をかけ、ご自身がなぜそのように分割するのかという意図を伝えておくべきです。

また、相続時に争いになるケースでは、実子だけでなくその配偶者の主張の影響が大きい場合が多々あります。生前から配偶者も交えて家族旅行をしたり、コミュニケーションをとっておかれるのが良いでしょう。

同時に、本来長女が負担すべき費用をどれだけ援助(生前贈与)してあげたのか記録に残しておくことです。相続時には相続財産は明確に数字で判明しますが、生前贈与の金額はいくらあったか分からないということが多いです。長女も次女も相続時に生前贈与がいくらあったか数字でわかる方が分割対して納得感があります。


早いうちから遺言を

そして早いうちから遺言を書いておかれることです。
遺言には、代表的なものとして自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、まずは手間と費用のかからない自筆証書遺言が良いかと思います。

自筆証書遺言は、本人が遺言書の全文・日付・氏名を書き押印するもので、メリットとしては、

(1)一人でいつでもどこでも作成できる簡易さがある。
(2)遺言作成したことを秘密にできる。
(3)費用がかからない。

ただ、デメリットとして、

(1)詐欺・強迫の可能性、紛失・偽造・変造・隠匿等の危険性がある。
(2)形式不備で無効、内容不完全で紛争になりやすい。
(3)執行にあたっては、裁判所の検認手続きが必要になる。
(4)訂正について厳格なルール(民法968条)がある。

が挙げられます。

一方、公正証書遺言は、本人が原則として口述し、公証人が筆記するもの。メリットとしては、

(1)内容が明確で、証拠力が高く、安全確実である。
(2)偽造・変造・隠匿の危険がない。
(3)字を書けない者でも可能。但し、署名は必要。
(4)裁判所の検認手続きが不要である。

ただ、デメリットとして、

(1)公証人、証人の立会いが必要で、手間がかかる。
(2)遺言の存在と内容を秘密にできない。
(3)公証人の手数料等費用がかかる。

が挙げられます。

まず、自筆証書遺言を形式が不備にならないよう注意して作成し、それでも上記デメリットが心配なようでしたら、公正証書遺言を作成することをおすすめします。

ただ、遺言はなぜそう分けるのかという「想い」の部分までは表現できないため、遺言があっても感情的なわだかまり残ってしまうことが多々あります。そこで、繰り返しになりますが、日頃からの親子間のコミュニケーションが大切ですが、諸事情あり難しい場合には、ご自身の「想い」を自分史のような形でご家族に遺していくことも大変有効でしょう。(ファイナンシャルプランナー:青木要介)(提供: ライブリー 退職金と未来のお金 )

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