ピーター・リンチ
(写真=Thinkstock/Getty Images)

株式への長期投資で驚くべき収益を獲得した実績を持つ米国のファンドマネージャーだったピーター・リンチは、13項目に及ぶ自らの投資銘柄視点を自著で公開しているが、その12番目に挙げられているのが「インサイダーが好んで買う株」というものだ。

もともと米国では早い時期からストックオプションを賞与や給与の一部として役員、幹部などに支給するケースが定石化してきていた。このため、ストックオプションを支給されていた幹部がどのようなタイミングでどれだけのストックオプションを行使するのかは、昔から注目されるポイントとなってきた。

したがって、この視点で経営層の株式売却の動きを見ていくことは、企業収益動向を占うという意味では大きな注目点となってきていることは間違いない。

しかし、リンチはさらにインサイダーが好んで買う株にも目をつけてきたのだ。インサイダーが自社株を買えるものなのかと驚く方もいるかと思われるが、一定の条件を満たせば購入は可能だ。ただ、売却にあたっては様々な条件がつくことは間違いない。


インサイダーが好んで買う株とは?

インサイダーが好んで買う株というと、かなりわかりにくい言い方になるが、要するに企業経営者が自腹を切って個人として自社の株を買うケースだ。日本でも有価証券報告書の役員の項目には、各人の株式保有数が細かく書かれているのでチェックすることができるが、米国ではこうした経営層の自社株買いの情報は、とくに大量購入となれば5%ルールで外部に必ず開示される。

また米国SEC・証券取引委員会はインサイダーの企業経営層が自社株式を売買したり、ストックオプションの購入権を行使したりした情報を10日以内に随時開示する義務を対象者に負わせている。

したがって、こうした大量購入は個人投資家でも簡単に調べられる有益な投資情報となっている。日本では残念ながらここまでリアルタイムでその動向をチェックできる仕組みは設けられていないが、米国株式市場での投資を考える場合にはしっかりチェックしておくと、大きな売買において確率の高い指針となる。

経営者層のインサイダー情報はSECのサイトはもちろんのこと、米国のYahoo Financeサイトに行って企業情報を調べれば把握することが可能だ。


企業経営者が自社株を自腹で買うほど自社の経営結果に自信をもつ行為はない

経営層が自腹で自社株を買う動きを見せるのは、確かに今後の経営による企業の成長と株価上昇に確信をもっているからこそできる行為だ。

しかも、大量保有をした場合、リストで公表されることになるため、投資の指針として使えるデータといえるだろう。経営層が自らの資金を投じて自社株買いをしている銘柄が掌握できれば、かなり利益のお裾分けにあずかれる可能性がでてくることになる。

銘柄の可能性を見極める視点にまったくブレがなく、しかも時代を超えて現代でもそのまま通用するものを選択していることは実に恐れ入る発想だ。最近では、インデックス指標の株買いは個別銘柄買いよりも大きな成果を出すことから、とにかくこうしたインデックス株をBUY & HOLDしておけばいいといった乱暴な見解を繰り出してくる著名投資家も現れて話題になっている。

しかし、長期投資には、その要件に見合う銘柄を選択することが依然としてワークしやすいことを改めて実感させられる。もちろん時世にあった解釈の調整が必要になるが、本質的な選択視点はいまも十分に機能する貴重なものといえる。(ZUU online 編集部)

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