(写真=PIXTA)
株価は景気の鏡、あるいはその国の体温といわれることがある。確かに経済が好調なら株価は総じて上昇トレンドをたどり、停滞あるいは不況に向かえば株価も下落基調となることが多い。では、株式投資の際には、何を指標に投資すればよいのだろうか。
日本のマクロの経済指標の例を挙げると、GDP(国内総生産)、為替レート、消費者物価上昇率、消費支出、雇用統計、鉱工業生産指数、景気動向指数、貿易収支、日銀短観などだろう。
例えば、2015年4-6月期の実質GDP(改定値)は年率換算で1.2%のマイナス成長となった。GDPの構成項目だけでも、企業設備投資や個人消費、貿易収支など多岐に渡る。
詳細をみてみると、足を引っ張ったのは個人消費(0.7%減)、輸出(4.4%減)、設備投資(0.9%減)だ。市場はこれらが今後どれだけ上向くかを注視している。なかでも4四半期ぶりにマイナスに落ち込んだ個人消費はGDPの約6割を占めるだけに今後の動向が注目されている。
株式市場で実際に注目される指標は数カ月単位で目まぐるしく変わることも珍しくない。現在重要なのはどの経済指標か、それを見極めるのが大切だ。どの項目に変化があれば景気へのインパクトが大きいか、そこに市場の注目が集まることになる。
なかでも注目されているマクロ指標をあえて5つ挙げると、雇用統計と消費者物価上昇率、為替レート、貿易収支、日銀短観ではないだろうか。以下では、それぞれどのような意味を持つ経済指標なのか解説していく。
それぞれどんな経済指標なのか?
7月の実質賃金は27カ月ぶりに前年比プラスに転じたとはいえ、その幅はわずか0.3%。6月の大幅な落ち込みを取り戻せていない。個人消費が回復に向かうかどうかは、今後の賃金動向にかかっていると言ってもよいだろう。
一方、消費者物価上昇率(インフレ率)も本来は消費の強さを示すバロメーターのひとつだが、現在は別の意味で注目されている。これがなかなか上がらないようであれば、インフレ率2%を目標に掲げる日本銀行が追加の金融緩和に踏み切るとの思惑が根強く、そうなれば株価への大きな支援材料になるからだ。
為替レートも一時ほどでないにせよ依然として市場の大きな関心事だ。円安に振れれば輸出企業にプラスに働き、設備投資や賃金引き上げにつながる可能性が高くなる。これは貿易収支でも同様で、主要輸出先である米国や中国の景気・輸入動向に注意を払う必要がある。米国が利上げすれば円安に振れる可能性が高いため、連邦準備制度理事会(FRB)の動向からは目が離せない。
日銀短観や景気ウォッチャー(通称:街角景気)調査も、日々の需要変動を体感している企業経営者や、消費に密着する自営業者などが先行きをどう見ているかを知るうえで非常に参考になる。
経済指標は中身と性格の見極めを
これらの指標をみるうえで重要なのは、その中身や性格まで見極めることだ。例えば、GDPでは全体の数字よりむしろ個々の項目の動きを見極めたい。また、消費の先行きの強弱を占う賃金動向は、総務省が毎月公表する家計調査でも伺えるが、サンプル数は約8000世帯と毎月勤労統計の約3万3000事業所に大きく及ばないため、統計の信頼性には若干難がある。
また、実績と予想(計画)は明確に区別したい。実績はあくまでも過去の数字。それがコンセンサス予想と大きく異なると株価が反応することもあるが、その状況が将来も続く保証はないため足元の状況を確認する程度にとどめることが多い。予想(計画)もやはり調査時点限りで、これを鵜呑みにするのは危険だ。為替レートや貿易収支では海外の金融経済政策やマクロ経済の動向も併せ見る必要がある。
このように、株価全体を占う上でのマクロ経済指標は重要だが、個別業種や企業への投資では、機械統計や建設工事受注など、いわゆるセミマクロ統計も非常に有用であることを忘れてはならない。(ZUU online 編集部)