株価は様々な要因で変動する。政治・経済情勢はもちろん、事故やスキャンダルなどのイベントが大きな株価材料になることもある。しかし、究極的な株価決定要因はやはり企業業績である。

最近ではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)で参加12カ国が大筋合意したことが日本の株価に追い風となったが、これは同協定が発効すれば日本の輸出が増え、関連企業の業績にプラスに働くと株式市場が読んだからだ。


経済指標で東京エレクトロンやコマツの動向もうかがえる?

株式投資で成功する確率を高めるには投資企業の業績動向を的確に見定めることが重要だ。その大きな助けとなるのが種々の経済指標だが、ここで大事なのは、個々の企業に対してより直接的に影響を及ぼす要因や指標を見極めることだ。

例えばGDP(国内総生産)は一国の経済成長を測るマクロ指標としては重要だが、個別企業の業績動向を見るうえでは範囲が広すぎる。以下では、個別株投資の際に注目しておきたいセミマクロ指標を主要業種で見ていくことにしよう。

まず、製造業では機械受注と鉱工業生産指数が代表的な指標だ。月次の結果が1~1.5カ月後に公表されるため、速報性も比較的優れている。機械受注は先行きの売上高を示す指標になる。電子・通信機械や工作機械、船舶など大くくりの分類のほか、半導体製造装置や建設機械など機種別の受注とその手持ち残高もわかるため、例えば東京エレクトロン <8035> やコマツ <6301> の毎月の動向をうかがい知ることができる。

調査範囲の広い鉱工業生産指数は、鉄鋼や電子部品など500近い品目の生産、出荷、在庫状況に加え、品目によっては稼働率や2カ月分の生産予測を示す。電子部品メーカーであれば、その主力製品の数字を追えばよい。その月の生産が好調でも在庫が増え過ぎていると翌月以降に生産調整が行われる可能性があるなどの判断材料になる。

このほか、業界団体や調査会社が公式統計より詳細な機種・品種分類や仕向先地域別の受注・販売実績のデータを公表している場合もある。代表例は自動車で、国内はもとより、米国や中国など世界主要市場における車種別の月次販売動向、地域によっては1台当たりのインセンティブ(値引額)まで知ることができる。

また、自動車や電子部品などの輸出産業では為替レートや現地の生産・在庫や輸出入動向も大きな判断材料になる。例えば世界最大のセラミックコンデンサー・メーカーの村田製作所 <6981> ではスマートフォンの生産動向が大きな収益変動要因であるため、その最大生産拠点である中国のスマホ生産の動向が気になるところだ。この場合は、同国の電子部品や生産用ロボットの輸入状況を調べれば大いに参考になる。