dollar symbol in businessman hand
(写真=PIXTA)

世界中の投資家が、米連邦準備制度理事会(FRB)がいつ利上げを行うかということに大きな感心を払っている。経済ニュースだけではなく、通常のニュースでもこの話題を取り上げるようになってきた。米国の利上げは具体的に何をもたらすことになるのだろう。


リーマンショック後、あふれ出した緩和マネー

米利上げについて触れる前に、現状を認識しておく必要がある。2008年のリーマンショックで金融恐慌と世界同時不況を防ぐため、米国は3度にわたって大胆な量的金融緩和(QE)を行った。これによってドルの調達コストが下がり、「緩和マネー」が膨張し、少しでも好条件の運用先を求めるようになった。あふれ出した緩和マネーは、より高い利回りを求めて、資源国・新興国へと流れ込んだ。その結果、資源国・新興国は経済成長を遂げ世界経済を下支えしてきた。日本においてもブラジルやオーストラリアへの投資が盛り上がっていた。

しかし、この流れに水を差す出来事があった。13年5月、FRBのバーナンキ議長(当時)がQEの縮小を示唆したことで一部の新興国から緩和マネーが流出し、新興国通貨の急落や株価の急落に至った。その後、米国がQE縮小を先送りしたことでマーケットは落ち着きを取り戻すこととなった。はからずも13年のバーナンキショックは米利上げの予行演習となったのだ。この経験から多くの投資家は米利上げが世界経済にもたらすリスクを考えねばならないことを学んだ。


世界市場にもたらされる3つの変化

マネーはより金利の高いところへと向かう。すべてはここに集約される。そして、実際の投資ではそこにリスクが加味されることになる。これまで限りなくゼロに近いコストで資金調達できていたが、利上げによってコストを意識させられることになる。その結果、米利上げは次の3つの大きな変化を世界のマーケットにもたらすだろう。

・リスク志向のマネーの流れが変わる(株価などリスク商品への影響)
・新興国経済のダメージ
・ヘッジファンドへの影響

最も素早く反応するのは株式市場と為替市場だろう。米国だけではない。日本も欧州も金融緩和策を取ったことで全世界の株式時価総額は09年3月の25兆4890億ドルから15年6月には72兆3700億ドルにまで膨れあがったとブルームバーグは分析している。利上げはこうした株式市場を真っ先に直撃することになるだろう。

銀行預金ではほとんど利息が付かないため、投資信託や株で資産を運用している投資家も多い。もし金利が上昇すれば、わざわざリスクを取って投資をしなくても銀行預金しておいた方が良いと考える人がたくさんいても不思議ではない。こうした動きが世界的な規模で起こることになるのだ。