マーケティングオートメーション
(写真=PIXTA)

欧米で数多くの企業が採用・運用を始めているのが、マーケティングオートメーションだ。マーケティングオートメーションとは、興味・関心や行動が異なる個々の顧客との個別なコミュニケーションを行うデジタルマーケティングにおいて、煩雑な業務を自動化するために開発されたツールやシステムを指す。従来のマスマーケティングの枠組みでは難しかった個別対応が、デジタルマーケティングとビッグデータの解析によって自動的に行うことが可能になった。

BtoBから始まったマーケティングオートメーションはその後、BtoCに応用しようとする動きが出てきた。メールやWeb、デジタル広告、ソーシャルメディアやオフラインのイベントなど、マーケティングにおける多様化・複雑化する顧客接点を統合管理し、見込み客を見極め、そのニーズや興味関心の度合いを把握しながら徐々にエンゲージメントを高めていくキャンペーンマネージメントを目指す。

デジタルマーケティングでは顧客一人一人に対して、「最適なコンテンツ」を「最適なタイミング」で「最適なチャネル」で提供することが必須だ。これらの業務を「シナリオ化」して自動的に遂行するのがマーケティングオートメーションだ。

実行・検証のプロセスを自動化することでPDCA(Plan・計画→ Do・実行→ Check・評価→ Act・改善)サイクルを高速化し、モニタリングから顧客発見、リード化・セグメント化して次のアプローチへ繋げるモデルを構築することができる。全チャネルにわたる顧客行動を把握し、より詳細に分析することで、確度の高い仮説を生み出すことが出来るようになったため、施策の実行や検証部分の自動化が実現したのだ。


マーケティングオートメーションの5つのステップ

マーケティングオートメーションのおおまかなステップは以下の通りだ。


1.マーケティング戦略とカスタマージャーニーの可視化

顧客のセグメントを設定し、そのセグメントがどのようにチャネル間を行き来して認知から購買までのファネル(見込みから受注までのプロセス)をたどるのかという「カスタマージャーニー」を可視化する。


2.キャンペーンシナリオの設計

その上でカスタマージャーニーに関連するマーケティング施策を洗い出し、そのなかで実行すべき「キャンペーンシナリオ」を設計するとともに、実装すべき施策を検討する。


3.コンテンツの作成

キャンペーンで利用する電子メールやフォーム、ランディングページなどを企画し、制作する。


4.オートメーションツールへの実装や設定

上記2、3に基づき、マーケティングオートメーションツールにキャンペーンシナリオと関連コンテンツを実装・設定する。


5.施策の効果の測定と改善

施策の効果を測定し、施策の改善に反映させる。


マーケティングオートメーションの留意点

マーケティングオートメーションで留意すべきは、自動化されるのはシナリオ策定や意思決定の部分ではなく、トライアンドエラーを行うルーティンワークの部分であるということだ。

想定される顧客行動にあわせたマーケティングアプローチをあらかじめシナリオ化しておき、実行・検証部分のルーティーンワークを自動化する。その成否は、事前に設定する「誰に・いつ・どんな内容を・どの方法でアプローチするのか」というシナリオの精度にかかっている。

適切な施策で、適切なコンテンツを提示出来るかがコンバージョンの向上に直結する。だからこそデータから顧客を理解し、その行動を把握し、どれだけリアルなカスタマージャーニーを創りだせるかが重要になってくる。つまり、マーケティングオートメーションを導入し使いこなすことではなく、これを手段として捉え、マーケティング活動全体での成果を上げるという目的を見失わないようにすることが肝要だ。

「どんなデータを基にセグメントし、どんなコミュニケーションが必要か?」「施策の効果をどんなKPI(重要業績評価指標)で測っていくべきか?」といった本来のマーケティングの部分にフォーカスするべきだろう。


日本市場で稼働を始めた実際のベンダー


『Oracle』

2012年にオラクルが買収したEloquaは、2014年度に本格的に国内市場でマーケティングを始めている。ローカライゼーション(日本語化)はまだ部分的に留まるものの、海外現地法人にて利用している日本企業も多く、グローバルの観点で国内でも利用を始めている企業が多くなってきているという。

また2013年にオラクルに買収されたResponsysは、Eメール配信の自動化に強みを持つ。Salesforceなど外部の顧客DBと連携し、顧客行動に基づきEメールの配信を自在にパーソナライズしプログラム化する機能に優れている。

これらの2製品は、クラウド型マーケティングプラットフォーム「Oracle Marketing Cloud」としてオラクルからリリースされている。


『IBM』

IBMによって買収されたUnicaが、最近は、IBMCampaignとして国内でも提供され始めた。2014年にはパーソナライゼーションツールのSilverpopも統合された。現在国内外で提供されているマーケティングオートメーション、キャンペーンマネジメントツールの中では最もハイエンドに分類されるエンタープライズ向けマーケティングオートメーションツールと言える。


『Marketo』

米国の大手マーケティングオートメーション関連企業では唯一といっていいかもしれない独立系マーケティングオートメーションベンダー。2014年には日本支社を立ち上げ、国内市場でのマーケティングを始めている。費用も月額数十万円程度から提供されるなど、中小企業もターゲットとしているようだ。B2Bマーケティングに強みを持っている。


『Salesforce』

2013年にセールスフォース社に買収されたExactTargetは企業向けメールマーケティングソリューションとして、米国では6000社以上の実績を持つマーケティングツールだ。今後は、Radian6やBuddymediaなどと統合されながらOne-to-OneマーケティングプラットフォームとしてSalesforce Marketing Cloudのブランド名で提供されていく。


『Adobe』

OmnitureのサイトカタリストやCMSのCQ5など、デジタルマーケティング関連企業を次々と買収してきたAdobeが、Eメール・キャンペーン管理のNeolaneを買収しAdobe Marketing Cloudとして提供している。本格的なマーケティングオートメーション機能を備えている。コンテンツ管理システムや画像編集ソフトなどとの統合が進めば、デジタルマーケティングプラットフォームとしてワンストップの機能を提供できそうだ。


マーケティングオートメーションへの日本とアメリカの期待

ある調査によると、日本企業が一番魅力に感じるマーケティングオートメーションのメリットは、マーケティング業務の効率化だという。日本の多くの企業が、手間やコストがかかるマーケティングにリソースを割きたくないことが大きな理由だと推測される。

一方アメリカでは、マーケティング業務の効率化に加え、見込み客の獲得と管理も重視されている。アメリカの企業にとって、マーケティング活動は売るための施策全般であり、様々な施策で見込み客の創出に取り組んでいる。多くのリードを獲得するだけではなく、獲得したリードをセグメントごとに管理し、それぞれに最適な施策を実行するためにマーケティングオートメーションを活用している姿が想像できる。

そのアメリカでは、マーケティングオートメーションを導入している企業は導入していない企業に比べて2倍のリードを獲得し、マーケティング活動の効率化も2倍だという報告もある。そのため、6割を超える企業で「1年以内にマーケティングオートメーションの予算を昨年度より増加する予定」と回答するなど、マーケティングオートメーションはより活用されていくことが予想される。

マーケティングオートメーションとは従来のマスマーケティングとは異なる性格の、いわばパーソナライズされたマーケティング手法だ。それぞれの顧客に対して個別に対応することに多大な手間と労力がかかっていた従来の営業活動が、マーケティングオートメーションによって「自動化」されることになる。

いわばシステムに営業活動を肩代わりしてもらうことで、セールスの最大化を図るとともに、限られたマーケティング・リソースや能力・労力を他の活動に振り替えることが可能になる。

マーケティングオートメーションは日本ではまだわずかな先進的企業が採用を始めたにすぎないが、コミュニケーションのデジタル化と顧客接点の多様化・相互作用が進むこれからの世界では、ごく当たり前のものになっていくかもしれない。(提供: Vortex online

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