決算下振れによる発射台低下で目標株価の引き下げ相次ぐ

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが8日に発表した2015年8月期の通期業績は営業利益が前期比9.8%増の1644億円となり最高益を更新しました。しかし、直近予想の2000億円を356億円も下回って着地し、ネガティブサプライズとなりました。そして翌日の株価は10%近い急落となり、ファーストリテイリング1銘柄で9日の日経平均を180円以上も押し下げました。

この決算を受けてファーストリテイリングではアナリストによる目標株価の引き下げが相次いでいます。IFISの決算&業績予想でみると決算発表後の目標株価の引き下げは6社にも上ります。これは前期の業績が計画を大きく下回ったことで、今期の発射台がこれまでの想定よりも低くなり、今期の業績予想を見直さざるを得なくなったためだとみられ止むを得ないといえます。

しかし、356億円の下振れのうち178億円は減損・除却損で一時的な損失です。また、残りの半分の178億円は事業の苦戦によるものですが、このうち100億円は6月からの天候不順で夏物販売が振るわず、値引き販売を強化し在庫処分を積極的に進めたため第4四半期3ヵ月間の粗利益率が大きく低下したことによるもので、これも一過性と捉えることができます。

減損や天候不順による苦戦というリスクは今期もありますが、ユニクロの競争力が低下したわけではなく、事業そのものに課題があるということではないことからすると、前期の計画未達はファーストリテイリングの成長に疑問を投げかけるものではないといえます。成長をけん引する中国の前期の営業利益も前期比66%増の386億円と順調に拡大していることから、大きな減損や除却損がなくなると仮定すると今期の会社予想の営業利益2000億円という数字は保守的にみえます。

懸念があるとすれば、値上げにより客数が前年を割り込んでいることです。前期は上期の客数が前年同期比1.6%減、下期が同4.4%減で、通期では前期比2.9%減となっています。また9月も前年同月比4.2%減と低迷したままです。来年の春夏物での値上げの可能性もあるなか、顧客離れが一段と進まないか心配されます。

金山 敏之
マネックス証券 シニア・マーケットアナリスト

【関連リンク】
今日の自律反発は評価できる
中国はどこまで減速を許容するか?
米国株はダブルボトム完成で安心感も足下は若干の過熱感
中国株 堅調な展開か 優良貸出債権を担保とする再貸出制度の拡大を好感
米国での関心はひとまずマクロからミクロへ 米企業の決算発表本格化