◆分析結果(2)・・・ROE
ROE(今期予想ベース)で同様に分析すると(図4)、2007年に株価が急落し始める前は高リターン銘柄と低リターン銘柄のグラフはほぼ重なって推移している。つまり、両者の平均ROEは同程度であったことを意味するが、本来、ROEと株式リターンは直接的には関係ない(ROEの水準はリターン説明力がない)ので、この結果と整合的だ。
ところが、急落する局面で売られた銘柄はROEが高く、買われた(売られにくかった)銘柄はROEが低い。直近の株価急落時も下位100銘柄は高ROE、上位100銘柄は低ROEという類似した傾向がみられる。
ここで、今期予想ROEは一時的な業績変動の影響を受ける可能性がある。そこで、できるだけ企業の実力を反映させるため実績5期平均ROEで分析したところ(図5)、やはり株価急落局面では低リターン銘柄の平均ROEが全体平均よりも高い(グラフが右上がり)結果となった。
このようにリスクオフの局面で高ROE銘柄が売られる理由としては、ROEが高い銘柄には輸出関連などグローバル景気や為替レートの影響を受けやすい企業が多いため、市場がリスクオフに傾くと将来の業績悪化や円高を嫌って売られやすいことが考えられる。また、時価総額が大きくて流動性が高い国際優良銘柄は海外投資家の保有比率も高いケースが多いので、売りが集中しやすいことも関係しているだろう。