波乱相場の兆し?
◆株価の推移
分析結果を解釈しやすいように分析期間の株価推移を確認しておこう。図2の左側のグラフは直近(2011年1月~2015年9月)のTOPIXの推移だ。12年末のアベノミクス開始から株価は大きく値上がりしたが、15年6月に変調をきたし8月・9月に急落した。本稿は波乱相場に焦点を当てることが目的なので15年6月~9月をオレンジ色の枠で囲ってある(図3~図7の枠囲いも同じ期間)。
同様に右側のグラフはリーマンショック前後(2005年1月~2009年12月)のTOPIXを示している。株価がリーマンショック前のピークをつけた2007年6月から株価が底入れする直前の2009年2月をオレンジ色の枠で囲ってある(図3~図7の枠囲いも同じ期間)。
リーマンショックの約1年前、07年8月にパリバショックが発生したが、その頃から株価が急落した様子がわかる。以下では、急落前の株価上昇過程と急落時に買われた銘柄、売られた銘柄の特性を分析する。
◆分析結果(1)・・・PER
分析結果を見てみよう。様々な角度から分析するため実際は20種類程度のファクターを用いたが、本稿では代表的なものを紹介する。図3は直近とリーマンショック前後における各月のリターン上位100銘柄および下位100銘柄の平均PERを示している(500銘柄全体の平均PERとの差の累計値)。
まず左側(直近)のグラフを見ると、株価急落期(オレンジ色の枠で囲った部分)より以前は高リターン・低リターンともに右上がりとなっており、リターン上位銘柄と下位銘柄ともに全体平均よりもPERが高かったことが分かる。また2013年以降は両者がほぼ並行していることから、アベノミクス以降は高リターン銘柄と低リターン銘柄の平均PERが同程度であったといえる。
ところが、上昇基調だった株価に変化が現れた7月以降は高リターン銘柄の平均PERが更に高くなった(グラフでは右上がりの傾きが大きくなった)一方で、低リターン銘柄は平均PERが全体よりも低くなった(グラフが右下がりに転じた)。
この傾向はリーマンショックやその前年の状況に似ている。図3の右側のグラフでも株価下落局面(枠囲いした期間)は、高リターン・低リターンともにそれ以前とグラフの傾きが逆になっており、リターン上位100銘柄/下位100銘柄の特性が変わったことが鮮明だ。
注目すべきは低リターン銘柄で、直近、リーマンショック時ともに株価上昇局面(枠囲いした以前)はグラフが右上がり(全体平均よりも高PER)だったのが、株価が急落する局面では右下がり(低PER)になっている。一般にPERが低いほど割安とみなされるので、株価が急落するときに最も売られた銘柄はPERでみれば相対的に割安だったことになる。