◆分析結果(3)・・・ボラティリティ

次にボラティリティ(株価変動率)をみてみよう。最近の研究でボラティリティが高い銘柄ほど長期的なリターンが低い傾向があることが明らかとなっている。図6でも、低リターン銘柄ほど右上がりの傾きが大きく、高リターン銘柄よりもボラティリティが高い様子がみられる。

ところが直近やリーマンショック時に共通してみられる現象として、株価が急落する局面ではこの傾向が強まる。低リターン銘柄のボラティリティには目立った変化がないが、高リターン銘柄はグラフが横ばい~右下がりになっていることから、全体平均と比べてボラティリティが低いことが分かる。

これは、株価が上昇する過程ではボラティリティがある程度高い銘柄でも値上がり期待から買われるが、ひとたびショックが起きると高ボラ銘柄が敬遠される一方、株価急落の懸念が相対的に小さい低ボラ銘柄が好まれる(売られにくい)ためであろう。

株式市場 図6

◆分析結果(4)・・・自己資本比率

最後に財務リスクとの関連性を調べるため自己資本比率による分析結果を示す(図7)。まず高リターン銘柄は直近・リーマンショック前後ともにグラフが右上がりなので、相対的に自己資本比率が高い点で共通している。

一方、低リターン銘柄は直近とリーマンショック前後で反対の傾向を示している。すなわちリーマンショック前後に売られた銘柄は自己資本比率が相対的に低いが、直近で売られた銘柄は自己資本比率が高く、その度合いは高リターン銘柄とあまり変わらない(グラフの右上がりの傾きが同程度)。

リーマンショック時は市場が信用リスクに敏感になっていたため、自己資本比率が低い(財務レバレッジが高く過剰負債な)企業が敬遠された様子がうかがえる。リーマンショック時に限らず、景気後退局面でたびたび観察される現象だ。

現在はどうか。中国経済の成長鈍化や世界的な景気減速が懸念され始めてはいるものの、信用リスクや金融危機のようなシステマティック・リスクが顕在化する状態には至っていない。このため、自己資本比率が低いという理由で売られる銘柄は少ないのだろう。

株式市場 図7