投資を通じて社会貢献できるファンドだが

マイクロファイナンスを行う金融機関への資金供給は、もともと国際機関など、公的な資金が主体となってきた。しかし、金融機関の数が増え、必要な資金が増加したことから、投資家から集めた資金で投資ファンドを組成し、資金を流す別の資金ルートが考案された。経済的な利益の追求と、貧困など社会的な課題について解決の両立を目指す「インパクト・インベストメント」のひとつとして、話題を集めた。

では、日本での状況はどうか。日本を代表するマイクイロファイナンス・ファンドの一つに設定当初、約200億円を集めたものの、現在の純資産総額は40億円台前半と、4分の1以下に縮小しているものがある。設定当初の純資産が最大で、解約により次第に減少する投資信託は、日本では決して珍しいことではない。とはいえ、投資で社会貢献をしようと考えて投資信託を買いながら、持ち続けることができなかった投資家が多数いることは否定しがたい事実だろう。

当初は話題を集めるも一過性に終わる

また、国内の公募投信の世界で、マイクロファイナンスファンドを設定する投資信託会社は現状では皆無に等しい。マイクロファイナンスを支援する公募投信が続々と登場し、投資家から資金を集め続けるなら、国内投資家の資金をマイクロファイナンスを手掛ける金融機関に提供するという本来の目的は達成される。しかし、現状はそうはなっていない。マイクロファイナンスファンドが登場した当時は話題になったが、一過性で終わってしまっており、途上国の貧困層に資金供給するという目的は十分に果たされているとは言えない。

インターネット上には、公募投信とは別の形でマイクロファイナンスを行う金融機関向けの投資を勧誘しているサイトもないことはない。とはいえ、国内に滞留する富裕層が安心して運用資金をマイクロファイナンスファンドに投じるには、証券会社や銀行の店頭で気軽に購入できる公募投信である方が望ましい。国内で、公募投信のマイクロファイナンスファンドが一過性の話題に終わり、まったく普及していないのは、残念な状況と言うほかない。(ZUU online 編集部)