注目度が高い銘柄は継続的に値上がり、低注目銘柄はじっくり吟味

実際、14年3月期と15年3月期の中間決算発表時に予想経常利益を上方修正した銘柄についてアナリスト人数別に株価の推移(市場全体との相対パフォーマンス)を調べたところ、図2のように5人以上の銘柄では発表翌日に初期反応として急激に値上がりした後も継続的に強いパフォーマンスを示した。

一方、1~4人の銘柄は初期反応こそ5人以上の銘柄と遜色ないが、その後はしばらく時間が経過してから株価が上昇しており、業績上方修正という情報の分析・評価に時間を要した様子が見られる。

また、アナリストが全くカバーしていない銘柄(0人)は、発表翌日こそ値上がりしたものの、その後は市場平均並みで推移しており、企業の発表後にアナリストから追加的な分析や割高割安を評価した情報が発信されないため市場が認識しづらく、結果的に株価に反映されない可能性が示唆される。

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以上の結果から、多くのアナリストがカバーしている銘柄では上方修正の発表後、速やかに投資判断することでより大きな収益を得られる可能性があると同時に、その後もアナリストの追加的な情報発信等を材料に値上がりしそうな銘柄を選別してから投資しても一定程度の収益を確保できそうだ。

また、アナリスト人数が1~4人の銘柄は、時間をかけて情報の内容をしっかり吟味してから投資しても機会損失は発表翌日の値上がり分で済みそうだ。図2からは投資判断までの猶予は約1ヶ月と示唆される。その間に情報収集・分析して銘柄を厳選することが賢明だろう。

最後に、アナリストが全くカバーしていない銘柄の場合は、いかに良い内容の上方修正であっても、それを市場に伝達する機能が十分でなく株価の値上がりに繋がらない恐れもあるので注意が必要だ。当然だが、自分だけでなく他の投資家も「もっと上がる」と思わなければ株価は上昇しない。

冒頭で述べたように日本株を取り巻く経済状況が昨年までと異なるほか、大型株主導か中小型株主導かといった市場環境の影響もあるので一概にはいえないが、市場全体の大幅上昇への期待が薄れつつある中、本稿で示した市場メカニズムに関する示唆が投資のヒントになれば幸いである。

井出真吾
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 チーフ株式ストラテジスト

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