東京株式市場は、企業業績の過度な懸念が後退するなか、総じて堅調な足取りを示している。日経平均株価も23日には約2ヶ月ぶりとなる終値での1万8800円台を回復し、市場環境は大きく改善しているように見受けられる。もっとも、日本経済の先行きについては依然として不透明感は払拭できない。特に気になるのが、新アベノミクスに見られる経済政策だ。
この点について、カブドットコム証券株式会社・投資情報室長の山田勉氏は「覚醒すればGDP600兆円は大して難しいことではない。安倍政権が経済政策に本気で取り組めば日経平均株価は現在の2倍になることも考えられる」と指摘する。では、新アベノミクスの「本気度」を見定めるには、どのような点に注意すれば良いのだろうか。山田氏に語って頂いた。
――日本経済については、TPP(環太平洋経済連携協定)の波及効果、企業業績の改善期待などマーケットは前向きに捉え始めているように感じられます。「材料は後から付いてくる」との格言もありますが、実際のところ日本経済の先行きについては、どのように見ておられますか?
まず、景気の現状は失速しかかってます。消費が不振、輸出も不振、よって設備投資も見合わせの悪い流れです。高級車の売れ行きも鈍り、傾きマンション問題も浮上、良いのはインバウンド消費くらい。安倍政権はGDP600兆円、出生率1.8%、介護離職ゼロ等を新たな目標に掲げましたが、具体策が提示されていないのが現在の状況です。
そうした中で、辛うじてTPPは成長戦略として一定程度、有効だろうという見立てがあります。でも、TPPが発効するには議会の批准等も経ないといけないわけで、まだ引っ繰り返される可能性があるわけですよね。実際、クリントン氏とかドナルド・トランプ氏は『反対だ』と言っています。おそらく、来年にアメリカの下院で投票が行われると思いますが、まだ分かりません。
筋としては悪くないと思います。TPPを締結して、交易をもっと増やすという方向自体は間違っていません。しかしながら、輸出依存度の大したことのない日本の起爆剤というには力不足でしょう。実際、日本にとってTPPは良い面もあれば、悪い面もあるのですが。たとえば、自動車及び部品にメリットがあるだろうと言われていますが、日本の自動車メーカーは海外で現地生産していますので、日本からの輸出量に関してのインパクトは限定的です。
TPPはほとんど秘密交渉で、よく分かっていません。ただし、農産品等に関しては、一定程度、輸入せざるを得ないでしょう。外国産に負けてしまうわけにいきませんから、農業部門等への予算措置っていうのは確実に付いてくるでしょう。また、グローバル投資家の受けは良いようです。