貯蓄競争の弊害、求められる個人消費の刺激政策

――「失われた20年」の失敗から、何を教訓として学びとるべきだと山田さんは考えますか?

利己主義で全体最適を失ったんですよ。「自分さえ良ければ」が「みんなで上手く行く」を打倒した。政府は財政再建原理主義、企業は低価格競争とコスト削減、家計は節約と貯蓄。みんなで無駄の削減合戦やれば、そりゃシュリンクしますって話。経済を再拡大するためにはどうすれば良いのかは簡単な話で、これまでの真逆をやればいいんです(笑)。みんなが金使えばいいわけですよ。みんなが金使うっていうのは、極端な話「今月は日本国民全員が給料を残さず使いましょう」みたいな状況になると、日本経済はあっという間に供給不足に陥って、インフレになります。

今、何が起きているのかというと、意図せざる貯蓄競争です。老いも若きも金持ちも貧乏人も貯蓄競争をしています。年収の高い層、富裕層を中心に稼いだら全部フリーザーの中にお金を放り込んでいるようなもの、稼いだら貯蓄、稼いだら貯蓄では世の中は回りません。貯まる処にはより貯まり、貧困層も拡大する、格差拡大の残酷。これでは行き詰まってしまいますよね。

――いまの時代は、本当に個人消費を刺激することが大きな課題ですね。これが実現できれば日本経済もずいぶんと様変わりすると思いますが。

結局、どうすれば一番いいのかっていうと、稼いで使う、そして余った分に課税するのが理想的です。いわゆる貯蓄税と呼ぶべきものです。使わなかった分に課税するとなると、みな使いますよね。そのようにして、消費を促すことができれば、金回りも一気に良くなるでしょう。

貯蓄税は、富裕層には大反発をくらいそうですが、経済的には極めてマイルドに効きます。個人消費の活性化をもたらし、寝ている貯蓄に課税されるのであればデメリットも小さい。マイナンバーの目指す先は、結局そこにあるわけですよね。余っているところに無理なく、自動的に課税するという方向です。マイナンバーの導入自体は間違っていません。個人的には、貯蓄税を導入する代わりに、所得税を廃止するとか、法人税も廃止するとか、それくらい思い切った政策を打ってくれるのを願っているのですがね、ずっと先の話ですが。


今は、まさに年末相場を占う「経済の秋」

――消費マインドを劇的に変えるには、実効性があり、インパクトの高い政策が必要ということですね。ところで、山田さんは年内の日経平均株価の見通しについて、どのように見ておられますか?まず、下値ですが再度1万7000円を割る可能性はありますか?

いや、私はないと思います。1万7000円を割り込むとすれば新アベノミクスの失敗でしょうね。追加緩和せず、小さすぎる補正予算で景気後退、デフレに逆戻りとか。2四半期連続マイナス成長を放置して、何もせずに来年夏の参院選、更に再来年の消費再増税なんてあり得ますかね?さすがに考えにくいですね。逆に新アベノミクスが景気回復にリブートをかける積極財政転換で600兆円が現実性を帯びるのなら2万円を超える期待が高まるのですが、まだ、そこまで楽観的になれない。

従って、この10月から11月は新アベノミクスで一定の政策メニューを提示できるかがポイントとなります。まずは、追加緩和と補正予算があればOKでしょう。郵政3社のIPO成功も含め、それらをロイター板にして12月高に向かい、2万円を回復するのが理想的ですよね。

――そのためにも、安倍政権には具体的な政策メニューをきっちり揃えて頂きたいですね。「1億総活躍社会」と言われても、茫漠として掴みどころがありませんからね。

1億人全員が活躍したら正直ウザイ(苦笑)。でも、ワンピース歌舞伎は楽しかった(笑)。繰り返しになりますが、名目成長率3%は世界でいえば最低限というか「それぐらいできるよね」っていう程度のことで、全然大変ではないんですよ。日本にとっては驚天動地の大転換になりますが。

経済成長というものは、お金を使わないことには始まりません。国民全員が家計の支出を1割増やせば、やがて収入も1割近く増えるんですよ。経済とはそういうものです。財政も同じで支出を増やすことが先決なのです。財政支出といえば、すぐに無駄の削減と批判する声があがるのですが、経済が膨らめば税収も上がるので顔を真っ赤にして怒る必要はないんですよ。「隗より始めよ」です。

この時期になると必ず、財政規模が過去最大、過去最大って話が持ち上がりますが、経済成長を続ける普通の国では、GDPも財政規模も過去最大が当たり前なんですがね。毎年、経済成長にコミットしている分、財政を膨らませていけば、勝手に税収は付いてくるものです。G7各国並みに当たり前の経済運営が出来るようになれば、日経平均株価だって最高値38915円超えが見えて来ないとも限りません。その意味で今は、まさに「アベノミクスラリー第2幕入り」を占う「経済の秋」と言えるでしょう。

安倍首相、加藤1億総活躍相には是非、覚醒して発奮してもらいたいのですが、「過去20年を総括し、反省し、挽回する」、その気配が微塵もないのが心配です。従来のようなメニューに留まるのであれば「600兆円は看板倒れ」、相場も「その程度」しか望めないというシナリオもありそうです。(ZUU online 編集部)

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