アベノミクスGDP600兆円達成で

「日経平均株価は現状から2倍」へ

――そう考えると、株式市場はTPPについて、やや希望的観測が先行していたということでしょうか。実体経済への影響については、なお不透明であると?

マーケットは、常に何かしらの手掛かりを求めます。夏相場のように悲観ムードが先行することもあれば、希望的観測が広がる局面もあります。ただ、長期的な視点で振り返って見ると、この一連の上昇トレンドも丸3年を迎えようとしているわけですよね。ここから、もう一段高のトレンドを描くためには、アベノミクスのリブート、デフレ脱却が欠かせません。

経済成長と言っても、2013年度は実質2.1%、2014年度は消費増税の影響でマイナス0.9%、今年度もゼロすれすれじゃないですか。アベノミクスは、本当は安倍首相が言うほど上手くはいっていません。ここでもう一度リブートをかけられるかどうかが、まさにこの秋の焦点です。そのリブートがかかる確信があれば、日経平均株価は2倍になる可能性も出てきます。

――2倍ですか?確かに、アベノミクス相場が始まって株価はあっという間に2倍になり、2万円も超えましたね。しかし、ここからさらに2倍は想像がつきません。

ここから2倍になるためには、名目GDP600兆円目標、あれに目鼻をつける必要があります。600兆円は、不可能だとほとんどの人が受け止めていると思いますが、そもそもその程度は世界標準であり、必ずしも不可能とは言い切れません。600兆円と言えばGDPを2割拡大する必要があるわけですが、名目ベースで3%成長を続けることができれば2021年あたりに達成することが可能な数字です。名目成長率3%は、世界標準でいえば「並」にすぎず、特別難しいことではありません。

3%成長と言っても、実質2%とインフレ率1%で実現します。それくらいの数字は、世界各国がこれまでも達成しているのです。この25年でフランスは平均3%成長でGDPが倍になり、米英は5%成長で3倍化しました。独伊がその間くらいです。問題は過去20年間、日本だけがなぜそれをできなかったのか。なぜ失敗を繰り返してきたのか、ということになります。


「失われた20年」は、間違った経済学が導いたもの

――なるほど。「失われた20年」への反省が足りない。失敗から何も学んでいないということでしょうか?

「失われた20年」の総括がされていない。何に失敗してきたのかという総括がなく、ただ3%成長できると言っているだけでは説得力がありません。今までの20年間はある種、「デフレターゲット」のようなことをやってきました。少し景気が良くなると増税、少し景気が良くなってくると増税と叩き潰してきてしまったわけです。総需要管理政策の失敗です。

そのあたりを総括できていれば、次回の消費増税はもはやあり得ない話です。軽減税率で実質減税するのでしょうか。そもそも、増税というものは、景気が過熱し、インフレが行き過ぎた局面で実施すると、効果的に作用します。税収も上がり経済もうまく冷やされます。それなのに、日本は過去20年の間、頭の中にはずっと「財政危機」があって、「増税しないといけない」強迫観念に捉われてきました。安倍政権も1回増税して失敗しましたからね。

そこをきれいに見直すことができれば、ほんと600兆円だって可能だし、株価を倍にすることだって可能ですよね。「失われた20年」といわれていますが、結局、日本の経済学者、経済学の主流派がずっと間違い続けてきているわけです。無駄の削減、構造改革、規制緩和、グローバリズム。こういうのは全部、間違いだったわけじゃないですか。安倍首相の周囲もやはり経済学の主流派で、プライマリーバランスなんて言っているから、いつまでたっても財政再建できないのです。もっと経済にアクセルを噴かして放置すれば、遅れて税収がどんどん上がってくるから、勝手に財政再建は達成できます。