TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の大筋合意で、約100種類の野菜に課していた関税をすべて撤廃する見通しとなった。一部を除いて即時撤廃となる。森山裕農林水産相は「ニンジンやタマネギは大部分が中国からで、米国やニュージーランド産は10%程度」と、国産野菜への影響は少ないとの見方を示している。だが安い輸入野菜が流通することで国産野菜の値下がりを農家が懸念していることも事実だ。

日本の野菜消費と輸入事情

農水省の統計によると、国内の野菜消費量の8割が国産で、輸入品は約2割となっている。家庭での消費はほぼ100%が国産だが、加工・業務用では輸入品が3割ほどを占める。輸入量は年々増加傾向にあり、中国からが過半数。生鮮野菜については中国産タマネギが全輸入量の約4割に達している。このほかカボチャ、ニンジン、ネギなどと続き、加工用ではトマトが多い。

輸入量が年々増加し、関税が撤廃されるにもかかわらず、影響が限定的とみる向きが多いのは、野菜の関税がもともと3%程度と低く、TPPに参加していない中国からの輸入が多いため。鮮度と検疫上の理由からも輸入が急増することはないと考えられているからだ。

TPP参加国からの輸入が多いカボチャ、ブロッコリー、アスパラガスなどは、国産が出回らない時季に流通。8.5%の関税が4年目に撤廃となる加工用ジャガイモは、冷凍で輸入されフライドポテトになるが、今でもほとんどが輸入品だという。トマトも生で食べる日本と加熱する海外では品種が異なり、生産農家も「影響は少ないと思う」と話す。競合が懸念されるのは低価格品で8.5%の関税が6年目に撤廃されるタマネギ。日持ちがして輸入しやすいため、ニュージーランドや米国産が出回り、業務用として人気が高いという。

野菜の関税撤廃の影響は?

それでは野菜の関税撤廃が、国内の生産体系にどのような変化をもたらすのだろうか。ちばぎん総合研究所がまとめたところによれば、茨城とともに北海道に次ぐ野菜の生産県である千葉では、産出額への影響はゼロと推定している。

安い海外産が入ってくるといっても、すぐに国内の生産が減少するとは考えにくく、農水省は競争力を高めるため大規模に集約された次世代施設園芸拠点の展開で農業の成長産業化を図ることに主眼を置く。併せて加工・業務用野菜の生産基盤の強化を進めるとしている。