民法の規定は
一方で民法608条1項では、賃貸借契約中に生じた必要費は賃貸人の負担であり、その費用を賃借人が負担したときには、直ちに賃貸人に請求できる旨が定めている。
これは必要費償還請求権といわれ、賃料と相殺することも可能だ。例えば、雨漏りをテナントが修繕した場合、その費用を賃料と相殺する形で、賃料を払わないというのは正当な主張となる。テナントからすれば、そもそも本来オーナーが修繕すべき雨漏りを直してあげたのだから、賃料と相殺するよりは、さっさと修理代金をもらいたいというのが本音のところだろう。そのため、必要費償還請求権によって賃料と相殺するケースは少ないであろう。
借家人は何も主張できないのか
そうすると雨漏りをした場合に、借家人が何も主張できないとすると、ややバランスが悪い感じがする。そのため雨漏りについては民法611条の類推適用ができると解釈されている。
類推適用とはドンピシャの規定は定められていないが、似たような事例の場合、適用範囲を広げようという考えだ。民法611条では「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」とされている。
イメージとしては台風で建物が半分壊れた時は、賃料も半分で良いということである。雨漏りは建物の滅失とまではいえないため、類推適用という訳だ。そのため、雨漏りによって建物が使えなくなった範囲においてはその割合に相当する分を賃料減額できるというのが法的な解釈だ。
早急な対応が重要
以上のことからすると、「雨漏りを直さないから家賃を払わない」というのはテナントの行き過ぎた主張といえる。オーナーとしても家賃収入が無い限り修繕費用が捻出できないケースもある訳であるから、正常に使える範囲においては賃料をしっかりもらう必要がある。
ただし、テナントにとっては雨漏りというのは大問題であるため、早急な対応をしてあげることが重要だ。雨漏りから賃料の問題に発展する前に、オーナーとして誠意ある修繕対応することが一番といえるだろう。 (ZUU online 編集部)