老後資金用であれば、確定拠出年金を優先的に利用
個人型DCは運用益が非課税になるだけでなく、支払った掛け金が全額「所得控除」の対象となるため、所得税や住民税が安くなる効果があります(企業型DCのマッチング拠出についても同じ効果がある)。所得税や住民税は、課税所得に税率をかけて計算しますが、掛け金を全額「所得」から差し引けるため、そのぶん課税所得が下がるためです。
例えば、課税所得300万円の人の所得税率は10%です。仮に会社員の人が上限額である年間27万6000円を積み立てた場合、その年の所得税が2万7600円安くなります。そして、翌年の住民税が2万7600円安くなります。つまり、年間27万6000円貯められた上に、所得税と住民税を合わせると5万5200円の税金が軽減されるためで、この節税分をリターンと考えるとかなりお得です(金額は概算。復興特別消費税などは考慮していない)。そして、税率が高く、掛け金が多いほど税の軽減効果も大きくなります。
最終的に受け取るときは非課税ではありませんが、積み立てたお金を一時金で受け取ると「退職所得控除」、年金形式で受け取るときには「公的年金等控除」の適用を受けることができます。
もちろん、留意点もあります。原則60歳まで引き出せないことです。ただ、老後に向けた資産形成という観点でいえば、「お金を引き出せない」ことはメリットにもなります。人間は弱いもので、運用がうまく行って利益がでているときや、逆に、生活が少しキツイ場面では「一部解約して使ってしまおうか」という誘惑が頭をもたげることもあるからです。
私は2005年から個人型DCに加入しています。毎月、強制的に銀行口座から自動振り替えで投信を購入して運用しているため、10年以上経ってそれなりに資産が積みあがってきました。老後というとまだ先のことと思いがちなので、ある程度の強制力は必要です。
現在は離職・転職した場合に加入を継続できないケースもありますが、こちらもDC法の改正によって改善される見通しです。
(*1)運用資産に対して年率1・173%が課税される特別法人税は2017年3月まで課税が凍結されている。過去には延長を繰り返しているが、今後の動向には注目を。
竹川美奈子(たけかわ・みなこ)さん
IFEMAP,LLC代表 ファイナンシャル・ジャーナリスト。
出版社や新聞社勤務などを経て独立。2000年FP資格を取得。新聞・雑誌等で取材・執筆活動を行うほか、投資信託や個人型DC、マネープランセミナー等の講師を務める。「1億人の投信大賞」選定メンバー、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」幹事などをつとめ、投資のすそ野の拡大に取り組んでいる。著書に『新・投資信託にだまされるな!』『一番やさしい!一番くわしい!はじめての「投資信託」入門』(ダイヤモンド社)などがある。
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