バフェット後、構造的な難問が山積み

バフェット氏は、「多角化したバークシャーのコングロマリット的な構造が、単一産業への集中を避けることを可能にし、自社資本を柔軟に割り当てることができる」と自慢する。しかし、同社の出発点である保険業は売り上げの23.4%を占めるなど、依然として重要だ。
この保険業に米政府からの圧力がかかっている。

2008年から09年の金融危機では、保険大手AIGの自己資本不足が金融システム全体を揺るがし、政府に救済された。再発防止のため、米政府は保険大手に対し、自己資本増強をはじめ、米連邦準備制度理事会(FRB)への報告書提出義務や、各種規制を課している。

問題は、バークシャーが金融システムに「システミックなリスク」になるほど大きいのか、という問いだ。もしそうであれば、手持ちのキャッシュの一部が各種の資本制限に縛られて、自由な投資ができなくなる恐れがある。

バフェット氏は、「バークシャーは保険業中心ではないので、システミックなリスクにはならない」と指定に反対している。だが、「大手メットライフ生命がシステミックリスク指定を受けたのに、640億ドルの負債を抱え、時価総額が2770億ドルのバークシャーがなぜ指定を逃れられるのか」との不満が保険業界内で高まっている。指定を受ければ、同社の株価と成長は悪影響を受けると、一部の投資サイトは警鐘を鳴らす。

さらに深刻なのが、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が8月に行った、バークシャーの「AA投資適格」格付けの見直しだ。バークシャーは、航空宇宙産業のプレシジョン・キャストパーツという会社を買収したが、資金調達の方法が明らかではなく、手持ち現金に悪影響を与えると判断された。

また、バークシャーが大型株主であるアメックス、IBM、ウェルズファーゴ銀行、コカ・コーラのうち、ウェルズファーゴ以外の業績が冴えず、数億ドル単位で損失を計上している。傘下のバーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道(BNSF)の業績も、元気に欠ける米経済や世界経済のため上向かない。バフェット後、構造的な難問の山積がバークシャーの後継者に引き継がれそうだ。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)