(写真=PIXTA)

日韓で一度は終了した通貨スワップについて、韓国側から再開を求める声が上がった。また中国人民元がSDR入りを果たして国際通貨の仲間入りをするというニュースも報じられた。これら為替ニュースに出てきた聞き慣れない言葉について解説する。

「通貨スワップ」通貨対象のデリバティブと国家間で外貨の融通の2種

単に通貨スワップと言う場合、2つの意味がある。1つは外貨建債券などで元本や金利を自国通貨にあらかじめ交換(スワップ)して債務を確定するデリバティブ(金融派生)取引、もう1つは国家間で緊急時に備えて外貨を融通し合うことだが、今回のテーマは後者である。

通貨スワップ協定で名高いのは、2000年5月にタイで合意した「チェンマイ・イニシアティブ(CMI)」。これは1997年にタイを発端に韓国まで波及し、世界経済を揺るがしたアジア通貨危機を教訓にしたもので、為替投機等の動きをけん制し、市場の安定を図ることを目的にしている。当時、ASEAN加盟国+3(日中韓)の8カ国それぞれ2国間協定を結ぶことが盛り込まれた。

ASEAN加盟国や韓国のように経済規模の小さい国では、中央銀行の保有外貨(外貨準備高)が少ないため、大規模災害などで貿易収支が急悪化したり、投機資金が大量に流出入したりするとその影響は大きい。実際、アジア通貨危機もヘッジファンドがタイ・バーツを一斉に売り浴びせたことが契機となった。

発足当初のCMIは資金枠合計900億ドルの2国間協定だったが、その後ASEAN+3の計13カ国が参加する多国間協定に発展し、14年7月には総枠2400億ドルに拡大している。

韓国側から日本に再開を求める声

日本は欧米やアジア主要国の中央銀行の多くと2国間協定を結んでいるが、なかでも政治色が濃いのは2005年にCMIと別枠で合意した日韓通貨スワップ協定だ。通常この種の協定は中央銀行間の取り決めが多いが、日韓協定では日本政府(外為特別会計)が直接関与した。

外貨準備が潤沢な日本が韓国から融通を受ける状況は現実的に考えにくく、これは事実上、韓国ウォンへの信用供与だとされている。スワップ額の上限は11年に700億ドルまで拡大したが、今年2月の期限までに韓国側から延長要請がなかったため、自然消滅的に失効した。竹島の領有権問題などで日韓関係が悪化したことがその背景だ。

ところがここへきて韓国から協定再開を求める声が相次いだ。10月上旬の国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会では韓国政府高官が「多国間通貨スワップなどのセーフティーネットで金融危機を予防する必要がある」との声明を出し、同月26日開催の日韓経済団体の合同定期会合でも韓国側が再開を求めた。韓国経済がウォン高による輸出競争力低下に加え、最大輸出先である中国の景気失速で大きな打撃を受け、危機感が強まっているためだ。