「SDR」国際準備金の特別引出権

SDRはSpecial Drawing Rightsの略で「国際準備資金の特別引出権」を意味し、その単位にも使われる。IMFが加盟国の保有する準備資産を補完する手段として1969年に創設した。

SDRはいわばIMFだけで通用する通貨で、それでモノやサービスが買えるわけではない。外貨不足に陥った国が、あらかじめIMFが指定した国にSDRを引き渡し、米ドルなどの交換可能通貨を融通してもらうことができる。

当初、SDRは金とドルを基準通貨としていたが、1971年に米国がドルと金の交換を停止する、いわゆるニクソン・ショックによりそれまでのブレトンウッズ体制(固定相場制)が崩壊し米ドルが暴落したことで、複数の主要通貨に連動する通貨バスケット制に移行した。

現状は米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の4通貨のバスケットで構成

SDRの資金総額は10月28日現在で2382億SDR(1米ドル120円換算で約40兆円)、国別の配分額は、最大の米国が421億SDRで全体の18%弱を占め、日本は2番目に多い156億SDR(約2.62兆円)、シェアは6.6%だ。

ただ総額40兆円という規模はそれほど多くない。タイを例にとると外貨準備高1572億米ドル(14年)に対しSDR割当額は14.4億SDR(20億米ドル)と、わずか1%強に過ぎない。途上国の多くが前述した通貨スワップ協定を締結しているのはこのためだ。

現在、SDRの価値は4つの国・地域の通貨の世界での使用比率(通貨バスケット)に基づいて決められている。構成比は米ドル41.9%、ユーロ37.4%、英ポンド11.3%、日本円9.4%で、SDRのドル換算値はIMFが毎日決定、公表している。ちなみに10月28日は1SDRがほぼ1.40米ドル(約168円)だった。

この割合が大きく変わろうとしている。中国人民元の算入だ。1999年に独マルクと仏フランがユーロに統合されたのを除くと実質的に1981年から続いてきた現行の4通貨制が34年ぶりに見直される公算が強まっている。

中国と地理的に距離がある欧州は中国支援、日米は影響力拡大を懸念

正式決定は11月のIMF理事会で行われるが、新たに人民元を組み込むにあたって、報道では「実質的な議論はない」「すべて順調に進んでいる」など関係者の話が報じられている。

中国は人民元の国際化を旗印に掲げ、SDRバスケットへの採用に強い意欲を見せている。最近、国賓として英国を訪れ、エリザベス女王との会談やバッキンガム宮殿への宿泊を許されるなど異例の厚遇を受けた習近平国家主席は、英国が「グローバルな包括的・戦略的パートナー」であるとし、英国側も「中国の西側でのベストパートナーになる」と、中国が世界の金融拠点シティーで存在感を増すことに前向きな姿勢を示した。

景気停滞に苦しむ欧州各国は、中国主導のアジアインフラ投資銀行にドイツが真っ先に参加を決めるなど、中国との経済関係を強める姿勢に大きく傾いている。他方、この欧州と中国の関係深化に警戒感を抱くのが米国と日本だ。いずれも東シナ海・日本近海での中国との軍事的緊張や、IMFやアジア開発銀行などの国際金融機関における発言力・影響力低下を懸念しているからだ。

日本には前回2010年のバスケット見直しで、通貨シェアをそれまでの11%から9.4%に縮小された苦い経験がある。国際資金決済における通貨シェアで今年8月に人民元が日本円を初めて上回ったことは記憶に新しい。世界の舞台で地盤沈下が続く日本。日銀や財務省筋は11月のIMFの発表を歯噛みしながら聞くのかもしれない。 (ZUU online 編集部)

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