なんのための「自動車税のグリーン化特例」か

だが、政府は「自動車税のグリーン化特例」を設け、旧車からエコカーへの買い替えを促している。これは、環境の側面はもちろんのこと、経済の側面もあるとされている。とくに2008年のリーマン・ショック以降は、景気対策として活用された面が大きい。簡単に言ってしまえば、消費を喚起することで、経済が活性化することを狙ったものである。

結果的に政府の狙い通りに物事は進み、とくに2009年にはじまったエコカー補助金に関しては、スクラップインセンティブのおかげで、どんどん旧車が潰され、エコカーが増産されていった。しかし、先に述べた通りエコカーの「製造過程」でCO2を撒き散らしている現状を考えると、本当に環境に優しいのか首を傾げざるを得ない。

自分のライフスタイルに合ったクルマ選びを

ようするに、走行時のCO2排出量だけを基準として「環境に優しい」と断定していることに問題がある。まさか、そのことを承知のうえで確信犯的に、旧車からエコカーへの買い換えを促進していると考えるのは早計であるが、現実問題として多くの消費者が「自動車税のグリーン化特例」に踊らされている嫌いは否めない。

エコカー補助金のときにも需要の先食いが起こり、制度が終了したとたんに失速し、回復が遅れたことがあった。また、旧車のスクラップが相次いだために、中古車市場の流通量が先細りとなり、価格バランスが崩れてしまう車種も生じた。一時的に景気を刺激したかに見えた政策も、自動車業界にとってはかえって混乱を招く側面もあった。

エコカーの良い面はもちろんたくさんあるし、将来的には、エコカーへの代替が進むことは疑いの余地はない。だが、その陰には製造時の環境コストや、買い替えによる家計への圧迫が存在している点は留意すべきであろう。

最終的にはユーザーが損得を判断し、消費に踏み切るのだが、政府やメーカーの言うことだけを鵜呑みにせず、自分のライフスタイルを鑑みながら最適な選択をすることが「本当のエコカー選び」となるのではないだろうか。(ZUU online 編集部)