(写真=PIXTA)
国税庁が行き過ぎた節税方法だとして、出る杭を打つ準備を本格化させている。その節税方法とは、タワーマンションの上層階の購入による相続税対策だ。タワーマンションによる節税は、物件によっては節税効果がかなり大きい場合もあり、富裕層の間では数年前から注目されている。以下では、タワーマンションによる節税方法と国税庁が「待った」をかけている内容について紹介していきたい。
そもそもこのタワーマンションを使った節税方法は、相続税対策本には載っていない。誰かが気付いてやり始めたうまいやり方であると思われるが、数年前からネット上でも話題になり、その効果の大きさから一気に広がったものと思われる。特に、最近は不動産価格が値上がりしているため、以前より節税効果も増し注目を集めている。
特に国が定めた評価減手法ではない
なぜ、タこの節税対策が相続税の教科書に載っていない方法かと言えば、これは特に国が制度上設けている評価減手法ではないからだ。相続税には国が救済措置として様々な評価減のルールを設けている。
特に不動産に関しては、小規模宅地等の特例による評価減や広大地による評価減など大きな評価減もある。また賃貸アパートを建築した場合にも、建物に借家権割合による評価減や、土地に貸家建付地による評価減といったものが発生する。国もいたずらに資産家の着ぐるみをはがそうとしている訳ではなく、一応は緩和措置を設けているのだ。
しかし繰り返しになるが、タワーマンションに関しては、特に制度上認められた評価減ではない。自然発生的に時価と評価額に大きな乖離が生じるだけなのだ。
マンションのように、構造方区分され独立して住居や店舗、事務所等の用途に供することができる数個の部分から構成されている建物を区分所有建物という。区分所有建物には建物評価額の算出方法が決まっている。区分所有建物はざっくり言うと、全体の建物評価額を専有面積の割合で案分したものが評価額となる。そのため、例えば同じマンション内に最上階と1階に70㎡の部屋があれば、そのマンション同士は同じ評価額となる。
時代の変化によって登場した50階以上のタワーマンション
ところが、実際に売買されるマンションの市場価格はそうではない。マンションの市場価格は階数が高くなればなるほど、眺望や景観が良くなり市場価格は上がる。
また、同じ階数であっても、バルコニーのある方位によっては日照にも差が出る。さらに角部屋であれば通風も良くなる。一般的には最上階の東南の角部屋というのが最も価値が高くなる。一方で相続税評価額は階層や位置による効用の差を加味していない。そのため最上階で東南角部屋の70㎡と2階で日当たりの悪い北向きの部屋の70㎡では評価額が同じくなってしまうのだ。
このように、評価額と市場価格の差は階数が高いほど大きくなる。そのため5階建てマンションくらいであれば、大した差は発生しないが、50階以上もあるタワーマンションであれば、その差が顕著に生じる。この問題は、そもそも区分所有建物の評価方法が定められた時に、タワーマンションのような建物を想定していなかったことが原因と言える。時代が進むにつれて、タワーマンションが世の中に登場し、しかもその階数が技術の向上や総合設計制度の活用と共に高層化してきたため、今まで問題にならなかったことが問題になり始めたという訳だ。