(写真=PIXTA)
2015年2月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称「空き家法」)が施行されて以来、空き家に対する問題意識が高まっている。また、空き家が増えてきたことをビジネスチャンスととらえる人達も登場しはじめた。そこで今回は、空き家の問題とそれをビジネスに変えている人達の現状について報告したい。
空き家が増えている理由
そもそもなぜ空き家が増えているのだろう。
根本的には人口減少社会に突入しているため、家に居住する人が自然に減少しているのが理由だ。特に過疎化が進む地方においては、空き家の増加傾向は顕著である。
空き家は、倒壊の危険や火災、不法投棄による悪臭、害虫や害獣被害、犯罪の温床、地域の景観に悪影響を与えるなど、周辺住民に対して様々な悪影響を及ぼす原因となる。隠れ家的に不良がシンナーやタバコを吸うために利用する溜まり場や、薬物取引の現場や保管場所となる可能性も高い。そのため誰も使わなくなった建物は本来なら取り壊すことが望ましい。
ところが建物の取り壊しについては、なかなか進まないのが現状だ。主な理由として建物解体費用の工面、固定資産税が上がる、の2つが挙げられる。
木造住宅の場合、解体費用として坪4万円程度かかる。そのため100㎡(約30坪)の木造住宅を壊す場合は、120万円程度の費用がかかることになる。通常、建物解体費用は銀行からの借入が難しいため、手元資金で用立てしなければならない。また更地化することで土地についての小規模住宅の特例という固定資産税の軽減措置もなくなる。建物の固定資産税は無くなるため、一概に負担が高まるとは言えないが、もともと建物に殆ど固定資産税がかかっていないケースでは、更地化により固定資産税が増えるケースも多くデメリットとなる。
これらの理由により空き家の解体はなかなか進まないのだ。
政府・地方自治体の空き家対策
最近増えている空き家の活用方法として、外国人旅行客を宿泊させる「民泊」がある。
通常、空き家をそのまま旅館のように活用することは、旅館業法に違反する。住宅を宿泊施設として利用するにはスプリンクラーや防火壁の設置、避難経路の確保をしなければならないからだ。宿泊施設となると不特定多数の人が利用することになるため、建物には一般住宅よりも厳しい規制が課されているのだ。しかしながら、昨今の外国人旅行客の増大に伴い、ホテル不足と空き家の増加がマッチングするため、実態として違法状態の民泊が拡大しているのだ。
このような状況を受け、大阪府などでは外国人旅行者向けに宿泊施設を確保するため、マンションなどの空き部屋を活用できる「民泊」条例を制定する動きが出ている。大阪ではアジアからの外国人旅行客が急増しており、宿泊施設の不足が深刻化している。そのため全国初の条例として民泊条例を定める動きがあり注目を集めているのだ。早ければ2016年春ごろから運用開始を行うとの意向であり、ビジネスチャンスとしても期待が高まる。
また島根県邑南町では、空き家の町営住宅に子育て世代を呼び込む政策も行っている。邑南町では日本一の子育て村を目標として掲げており、保育料や中学生までの医療費の無料化も行っている。邑南町のホームページでは町営住宅だけではなく、民間住宅の入居者募集情報まで掲載されており、町をあげて空き家対策に取り組んでいる。
地方創生政策によって、邑南町のようなIターン施策は全国の市区町村に広がっている。
商機とみてビジネス展開する民間企業
空き家の活用が進むことで、新たなビジネスチャンスも広がっている。そこで空き家増加を商機とみて果敢にビジネス展開を行っている2社を紹介しよう。
1つ目は民泊を運用代行してくれる株式会社Hosty(東京都港区)だ。実際、空き家を民泊に活用しようとしても、運営ノウハウがないと素人には難しい。そのため空き家を民泊として貸したいオーナーに対し、宿泊オペレーションを代行するというサービスだ。
2つ目に紹介するのはIターンやUターンに特化した転職エージェントである株式会社リージョナルスタイル(東京都港区)だ。「暮らしたいところで思い切り働く」を切り口に地方転職への支援を促している。地方の転職情報というのは取得しにくく、IターンやUターンを考えている人達にはありがたい存在である。転職エージェントが乱立する中、新たな価値を社会に提供している会社と言えるだろう。
以上、増加する空き家と自治体の取り組み、具体的なビジネス展開の3点について見てきた。
何かが増えるということは、その分ビジネスチャンスも増えることを意味する。空き家が増えてネガティブな側面だけが報道されているが、空き家ビジネスが増えているのも事実なのである。
今後も空き家ビジネスは注目に値しそうだ。(提供: Vortex online )
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