(写真=PIXTA)

社員のワークライフバランスに理解があるとされていた資生堂 <4911> 。育児制度として2時間早く帰ることができる「短時間勤務」をいち早く導入していたが、2014年4月に行われた制度改革で、育児中の社員にもフルタイム勤務の社員と同じノルマを課すこととなった。このことが、NHKの「おはよう日本」で放映されて話題となった。ネット上では「資生堂ショック」と呼ばれるなど波紋を呼んでいる。

同社のノルマは1日18人以上の接客というが、果たして「ノルマ」は営業成績アップにつながるものなのだろうか。ノルマについてはどうとらえられているのだろうか。


企業で活用されている目標管理制度(MBO)

MBOとは「Management by Objectives」の略で、米国の経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱されたプログラムだ。MBOという呼称を使っているかどうかはともかく、多くの企業で活用されている制度だ。

その理論は2つの柱からなる。「どうすれば個人のモチベーションを高め、その能力を最大限に発揮できるのか」「どうすれば個々人の活動を組織全体の成果に結びつけることができるのか」との2つだ。MBOは「ノルマによる管理」と「目標による管理」の対比にあるため、目標は自ら設定することが重視されている。ここではMBOのメリット・デメリットについても紹介したい。

まずメリットは2つあるとされる。1つはモチベーションの向上だ。設定する目標は会社自体の目標にリンクするため個人の達成が、部門の達成、会社業績の拡大につながっていく。そしてモチベーションや意欲の向上につながる。もう1つは、従業員の能力を引き出すことができること。適正な目標設定であれば、創意工夫することで能力が最大限に発揮され、目標が達成される。

一方、デメリットも2つある。まず目標やノルマを達成することに重点が置かれることによって、“自主性や自己統制に基づいて”目標を達成するという意味合いが失われてしまうこと。次に、自らが設定した目標でなく、上司や会社から押し付けられた場合、やる気がなくなってしまうことだ。

実際に経営者や企業の姿勢・事例からノルマについての考え方を探ってみよう。


ソフトバンクグループ創業者・孫正義氏の考え

「公言して達成を目指すほうがリスクは高いが公言すべき」——。

これはソフトバンクグループの孫正義氏の名言だ。人間は適度なプレッシャーがあることで動き出す。結果を出しやすいのはプレッシャーが大きい、リスクが大きい、つまりノルマがある状態だ。ノルマというリスクを背負い公言することで達成した時には、評価されやすくなる。

リスクを背負うことで追いつめられ、成功や達成する確立が高くなる。ノルマに対してのとらえ方を述べているといえる。

また住宅営業という厳しい世界で、30年弱で7000軒売った、あるカリスマ営業マンは、「ノルマを達成しなくていいというわけではないが、それがすべてではない」としたうえで、「数字を残すことがすべてになってしまうと、上司の指導が小手先のテクニックや話法に偏ってしまう。営業力は人間力だと思う」と考えを述べる。

そして、「そのためには、上司は部下の人間力が上がる方法を考えるべき」と話し、上司の重要性を訴えている。