(写真=PIXTA)
はじめに
インドは、今後中国を抜いて、世界最大の人口を有する国になることが予測されている。その人口構造も、中国とは異なり、今後も比較的長期間にわたって、厚い若年層・中年層を有することが想定されている。このため、生命保険市場という観点からみた場合、将来にわたってさらなる成長が期待される市場と認識されている。
今回のレターでは、インドの生命保険市場の概要について、報告することとする。次回以降のレターで、昨今のインドにおける保険監督規制の改革を巡る状況等について、報告する。
生命保険市場の概要-発展段階にあるが成長余地は極めて大きい-
◆インドの生命保険市場(*1)
インドは、2014年ベース(*2)で、人口が12億7,592万人、GDPが2,051.23十億ドル、一人当たりGDPが1,607.65ドルの国である。因みに、日本は、人口が1億2,706万人、GDPが4,602.37十億ドル、一人当たりGDPが36,221.81ドルであることから、日本との比較では、インドは人口では日本の10倍程度、GDPでは日本の半分程度の国である。
保険市場については、スイス再保険会社の資料(*3)によれば、2014年ベースの収入保険料で、生命・損害保険合計で69,889百万ドル、うち生命保険で55,299百万ドルとなっており、生命保険の比率が高い。
さらに、この収入保険料規模は、保険合計で世界第15位、生命保険で世界第11位となる。全世界の保険料に対するシェアは、保険合計が1.5%、生命保険が2.1%(日本は、それぞれ10.0%、14.0%)となる。普及率を示す対GDP収入保険料比率では、保険合計で3.3%、生命保険で2.6%(日本は、それぞれ10.8%、8.4%、世界平均は、それぞれ6.2%、3.4%)となっている。
なお、生命保険の普及率(対GDP収入保険料比率)を、他のアジア諸国と比較したものが下の表である。タイやマレーシアといった国々には若干劣るが、中国、フィリピン、インドネシアといった国々を上回る水準となっている。
一方で、保険密度を示す1人当たり保険料は、2013年ベースで、保険全体で52ドル、生命保険で41ドル(日本は、それぞれ4,207ドル、3,346ドル、世界平均は、それぞれ652ドル、366ドル)となっており、未だ低い水準にとどまっている。
インドの人口及び年齢階層別の人口構成の推移を見た場合、下記の上の図が示しているように、中位推計では2050年を超えても人口が増加し、下の図が示しているように、今後も厚い若年層・中年層が存在し続けると予測されている。
さらに、インドの平均寿命は、今後急速に伸びていき、一方で、合計特殊出生率は、先進国と同様に低下していくことが予測されていることから、社会全体としての高齢化も進んでいくことになる。これにより、将来の老後保障のためのニーズが高まってくることも想定されることになる。
以上の点から、インドの生命保険市場は、現時点では、国全体としての規模に比較して、まだまだ発展途上にあるといえるが、今後の成長の余地が極めて大きく、生命保険会社にとって、大変魅力的な市場である、と考えられる。